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2023.07.28
生前整理のお役立ちコラム
 

不動産の生前贈与|親子間でも税金かかる?相続と比べてどちらが得?

将来的な相続を見すえ、持ち家などの不動産を子どもに生前贈与しようと考えている方は多いかもしれません。

 

その際に、疑問となるのが次のような点です。

 

「親子間でも贈与税はかかる?」

「贈与税を節税する方法は?」

「相続と比べてどちらが得?」

 

結論から言えば、親子間であっても贈与税は課税されます。また、相続を選んだほうが得をするケースがあることも事実です。

 

今回は親から子へ不動産を生前贈与したときの贈与税について、「税率」「節税方法」「相続との比較」を紹介します。

 

不動産の相続を成功させたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

親子間の不動産贈与で贈与税はかかる?【いくら】

 

たとえ親子間であっても、財産を生前贈与すると贈与税はかかります。

 

この財産には、現金や株式はもちろん家や土地などの不動産も含まれます。

 

具体的な税率や税額は、次に紹介するとおりです。

 

贈与税の税率

そもそも贈与税の申告方式には「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2種類があります。

 

この2つのうち、原則として用いられるのは「暦年課税制度」です。

 

暦年課税制度では、毎年1月1日~12月31日の贈与を合計して110万円を超えた部分に対して課税されます。

 

110万円というのは贈与税の基礎控除額であり、1年間の贈与が合計110万円以下なら非課税かつ申告も不要です。

 

贈与税の計算方法を式で表すと、次のとおりです。

 

・贈与税=(1年間の贈与財産の合計-110万円)×税率-控除

 

贈与税の税率は、「特例贈与」か「一般贈与」かで異なります。

 

父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与した場合は特例贈与にあてはまり、税率は次のとおりです。

 

【特例贈与の税率】

・200万円以下:10% (控除なし)

・400万円以下:15% (控除10万円)

・600万円以下:20% (控除30万円)

・1,000万円以下:30% (控除90万円)

・1,500万円以下:40% (控除190万円)

・3,000万円以下:45% (控除265万円)

・4,500万円以下:50% (控除415万円)

・4,500万円超:55% (控除640万円)

 

特例贈与にあてはまらない贈与は一般贈与となり、税率は少し高くなります。

 

【一般贈与の税率】

・200万円以下:10% (控除なし)

・300万円以下:15% (控除10万円)

・400万円以下:20% (控除25万円)

・600万円以下:30% (控除65万円)

・1,000万円以下:40% (控除125万円)

・1,500万円以下:45% (控除175万円)

・3,000万円以下:50% (控除250万円)

・3,000万円超:55% (控除400万円)

 

参考: No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)- 国税庁

 

贈与税の計算例

たとえば父から子ども(18歳以上)へ3,000万円の不動産を生前贈与したとします。

 

その1年間に他の贈与がなかったとして、贈与税の金額は次のとおり計算できます。

 

・(3,000万円-基礎控除110万円)×税率45%-控除265万円=1,035万5,000円

 

このように不動産などの高額財産を生前贈与した場合、贈与税も高額となる点は理解しておく必要があるでしょう。

 

生前贈与とは?相続とどっち?非課税・一般的なやり方・注意点も解説

贈与

 

親子間で不動産を生前贈与するときの節税対策【選択肢】

 

親子間で不動産を生前贈与したときの贈与税が高額だとは言え、課税額を少なくする方法はあります。

 

具体的な節税対策としては、おもに次の2つがあげられるでしょう。

 

暦年課税制度で分割して贈与

1つめの節税対策は、暦年課税制度のまま分割して贈与する方法です。

 

先ほどもお伝えしたとおり、暦年課税制度では年間110万円以内の贈与は原則非課税です。

 

ということは、土地などの持ち分を110万円以内に分割して毎年贈与していけば課税されません。

 

たとえば1,000万円の土地を親から子へ生前贈与する場合、毎年10分の1(100万円)ずつに分けて10年間で贈与すれば非課税です。

 

ただし暦年課税制度では、相続開始前3年以内に贈与された財産は相続税の課税対象となります。

 

この「相続開始前3年以内」という期間は、税制改正により2024年1月以降から「相続開始前7年以内」に延長されます。

 

そのため暦年課税で分割贈与する方法は、長い期間親が健在である場合にのみ有効と言えるでしょう。

 

また、不動産の持ち分を分割するなど手続きが複雑になるため、よく考えたうえで利用することが大切です。

 

相続時精算課税制度を利用する

2つ目の節税対策は、相続時精算課税制度を利用して不動産を生前贈与する方法です。

 

60歳以上の父母または祖父母などから18歳以上の子または孫に財産を贈与する場合、この相続時精算課税制度を選択できます。

 

相続時精算課税制度では、贈与額2,500万円を超えた部分にのみ20%の贈与税が課されます

 

たとえば親から子へ3,000万円の不動産を贈与した場合、相続時精算課税制度で納める贈与税は次のとおりです。

 

・課税対象:3,000万円-2500万円=500万円

・贈与税額:500万円×20%=100万円

 

2024年1月以降は税制改正により相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除が設けられるため、さらに税額が減ります。

 

・課税対象:3,000万円-2500万円-110万円=390万円

・贈与税額:390万円×20%=78万円

(※2024年1月以降)

 

贈与税の計算には原則として暦年課税制度が用いられますが、申告するときに必要書類を添付すれば相続時精算課税制度に変更することが可能です。

 

ただし相続時精算課税制度で贈与した財産は相続財産に含まれる(相続税の課税対象となる)点には注意が必要です。

 

つまり贈与税を節税できるかわりに、相続税は納めなければいけません。

 

また、一度相続時精算課税を選択すると途中で暦年課税に戻せない点も理解しておく必要があります。

 

参考: No.4103 相続時精算課税の選択  -  国税庁
参考:令和5年度税制改正(案)のポイント - 財務省

 

不動産の生前贈与と相続はどちらが得?【比較】

 

ここまで贈与税を節税する方法をお伝えしてきましたが、そもそも生前贈与よりも相続のほうがお得なケースは多くあります。

 

その理由は次にあげるとおりです。

 

相続税の基礎控除額は大きい

そもそも相続する財産の総額によっては相続税が発生しないケースもあります。

 

なぜなら相続税にも基礎控除があり、基礎控除額を上回った部分にのみ課税されるからです。

 

相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という式で計算できます。

 

たとえば相続人が二人いる場合の相続税の基礎控除額は次のとおりです。

 

・3,000万円+(600万円×2)=4,200万円

 

この場合、不動産を含めた相続財産の総額が4,200万円以内であれば相続税は非課税になります。

 

相続税の税率のほうが低い

相続財産の総額が相続税の基礎控除額を上回る場合でも、相続税を納めたほうが得をすることもあります。

 

なぜなら贈与税よりも相続税のほうが税率が低いからです。

 

相続税の税率は、次のとおりです。

 

【相続税の税率】

・1,000万円以下: 10% (控除なし)

・3,000万円以下: 15% (控除50万円)

・5,000万円以下: 20% (控除200万円)

・1億円以下:30% (控除700万円)

・2億円以下:40% (控除1,700万円)

・3億円以下:45% (控除2,700万円)

・6億円以下:50% (控除 4,200万円)

・6億円超:55% (控除7,200万円)

 

対して、父母から18歳以上の子どもへ贈与する場合の特例贈与の税率は次のとおりです。

 

【贈与税の税率 ※特例贈与の場合】

・200万円以下:10% (控除なし)

・400万円以下:15% (控除10万円)

・600万円以下:20% (控除30万円)

・1,000万円以下:30% (控除90万円)

・1,500万円以下:40% (控除190万円)

・3,000万円以下:45% (控除265万円)

・4,500万円以下:50% (控除415万円)

・4,500万円超:55% (控除640万円)

 

比較すると、不動産のような高額財産を一括で譲る場合は相続税のほうが税率が低いことが分かります。

 

とはいえ贈与税には年間110万円の基礎控除があるため、毎年の贈与が少額であれば贈与税をゼロにできる可能性があることも事実です。

 

どちらが得かは、贈与の方法によって変わってくると言えるでしょう。

 

参考: No.4155 相続税の税率 - 国税庁

 

小規模宅地等の特例で相続税が減る可能性

子が親の不動産を相続する場合は、「小規模宅地等の特例」を適用することで相続税額を減らせる可能性もあります。

 

小規模宅地等の特例とは、故人が居住していた土地などについて相続税評価額を最大50%~80%減額できる制度です。

 

減額率は土地の種類によって異なりますが、親の自宅が建っている土地(400平方メートル以下)を子が相続する場合は80%減額することが可能です。

 

たとえば土地の相続税評価額が3,000万円だった場合、特例で80%減額された相続税評価は600万円となります。

 

土地の相続税額は相続税評価額に税率を掛けて計算されるため、高額な土地ほど減税効果が期待できます。

 

参考: No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)- 国税庁

 

相続のほうが不動産取得税・登録免許税の負担が軽い

親子間で不動産を生前贈与するときにかかる税金は、贈与税だけではありません。

 

不動産の名義変更をするときに、不動産取得税や登録免許税といった税金もかかります

 

親の自宅を子どもに生前贈与した場合の不動産取得税・登録免許税の税率は次のとおりです。

 

・不動産取得税(土地の部分): 固定資産税評価額×1/2×3%(令和6年3月31日まで)

・不動産取得税(建物の部分): 固定資産税評価額×3%(令和6年3月31日まで)

・登録免許税(土地・建物ともに): 固定資産税評価額×2%

 

これらの税金は、相続のほうが負担が軽くなります。

 

なぜなら相続の場合は不動産取得税が非課税なうえ、登録免許税の税率も「固定資産税評価額×0.4%」に下がるからです。

 

参考: No.7191 登録免許税の税額表 - 国税庁

参考:不動産取得税 - 東京都主税局

 

親子間で不動産を生前贈与するときの注意点【相続トラブル】

 

親子間で不動産を生前贈与するときは、相続トラブルにつながらないよう配慮することも大切です。

 

とくに特定の子どもだけに不動産を生前贈与する場合は、次の点に注意しましょう。

 

生前贈与を受けた子の相続分が減る

特別受益を受けたと認められる相続人は、他の相続人よりも相続分が少なくなる点に注意が必要です。

 

特別受益とは、特定の相続人が故人からの贈与などによって受けた利益のことを言います。

 

相続時に各相続人の取り分を決めるときは、この特別受益分を相続財産に含めて計算しなければいけません。

 

これを特別受益の持ち戻しと言い、相続人どうしの不平等を防ぐために民法で定められています。

 

たとえば親の財産4,000万円を2人の子どもA・Bが相続するとしましょう。

 

親がAに対して2,000万円の不動産を生前贈与していた場合、それぞれの相続分は次のとおり計算されます。

 

・相続財産の総額:4,000万円+2,000万円=6,000万円

・Aの相続分:(4,000万円+2,000万円)×1/2-2,000万円=1,000万円

・Bの相続分:(4,000万円+2,000万円)×1/2=3,000万円

 

なお、独立している子どもへ親が居住用不動産を贈与した場合は、特別受益にあたる可能性が高いと言えます。

 

法定相続人とは?対象者や相続の優先順位と割合を遺品整理士が解説!

相続

 

参考: 民法第九百三条 – e-gov法令検索

 

遺留分の侵害に注意

親から子へ不動産を生前贈与する場合、遺留分の侵害にも注意が必要です。

 

遺留分とは、各相続人に認められた最低限の遺産の取り分のことです。この遺留分は遺言よりも強い権利とされています。

 

たとえば遺言に「長男に全財産を譲る」と記されていた場合、他の子どもは財産を相続できなくなってしまいます。

 

それでは不平等だということで、最低限の取り分である遺留分が各相続人に保証されているのです。

 

この遺留分を侵害された相続人は、他の相続人に対して自身の遺留分を請求(遺留分侵害額請求)できます。

 

注意すべきは、生前贈与も遺留分侵害請求の対象になりうる点です。

 

つまり何も考えずに不動産という高額財産を生前贈与すると、将来的に遺族同士での裁判沙汰になる可能性もあるということです。

 

生前贈与をするときは、遺留分への配慮を忘れないようにしましょう。

 

【生前整理】遺留分とは?生前に準備しておきたい相続トラブルの対策と相談先をご紹介

遺留分

 

参考: 民法第千四十二条 – e-gov法令検索

 

不動産を生前贈与するときは法律・税制をよく確認しよう【まとめ】

 

最後にもう一度、「親子間での不動産の生前贈与」についておさらいしましょう。

 

・たとえ親子間であっても、不動産を生前贈与すると贈与税はかかる

・贈与税の節税対策としては、「暦年課税制度での分割贈与」や「相続時精算課税制度の利用」があげられる

・贈与税よりも相続税のほうが基礎控除額が大きく、税率も低い

・小規模宅地等の特例を適用できれば、土地の相続税を減額できる可能性がある

・不動産を生前贈与する場合は、特別受益や遺留分の侵害にあたらないか考えることも大切

 

上記のとおり、税制や法律を考慮すると必ずしも生前贈与が得とは言えません。

 

それぞれの事情に合わせて相続の方法を考えることが重要と言えるでしょう。

 

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