近年、遺産相続の準備として遺贈寄付を検討する人が増えてきました。
しかし遺贈寄付の具体的なメリットを知らない方も、まだまだ多いのではないでしょうか。
「遺贈寄付をすれば相続税を減らせるって本当?」
「節税効果以外にどんなメリットがあるの?」
「遺贈寄付のメリットを得るうえでの注意点は?」
上記のような質問に答えるため、今回は「遺贈寄付とは何か」の解説から始まり、「遺贈寄付のメリット」や「メリットを得るための注意点」について解説します。
私はプロとして生前整理や遺品整理のお手伝いをしている者です。
日々、現場に携わる中で学んだ知見も活かして解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
遺贈寄付(いぞうきふ)とは、亡くなった方の財産の全部または一部を寄付することです。
そもそも、遺言書によって相続人以外の第三者に遺産をゆずることを「遺贈(いぞう)」と言います。
その遺贈という方法によって寄付をするのが遺贈寄付です。
遺贈寄付をする方法は複数ありますが、次の2つの方法が一般的です。
・遺言による寄付 … 亡くなった後に遺産が寄付されるように遺言書を作成しておく方法
・相続財産による寄付 … 相続人が遺産を相続した後で寄付する方法
厳密に言えば「相続財産による寄付」は遺贈ではありませんが、遺贈寄付の方法として語られることが多いため、今回は遺贈寄付の方法に含めて解説していきます。
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近年、遺贈寄付を検討する人が増えているのは、「社会貢献ができる」こと以外にもメリットがあるからです。
遺贈寄付のメリットには、次のようなものがあります。
相続をさせる財産が高額な場合は、遺贈寄付によって相続税を節税することが可能です。
例外はあるものの、通常、遺産が基礎控除額「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超えると相続税が課せられます。
しかし「遺言による寄付」をした分の財産は、相続税の課税対象に含まれません。
また、相続人が財産を相続した後で「相続財産による寄付」をした場合でも、次のような要件を満たせば特例によって相続税の課税対象から除くこともできます。
・相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに寄付する
・財産をそのままの形で寄付する(例:不動産や有価証券などは現物のまま)
・認められている団体、組織に寄付する
なお、寄付先として認められている団体・組織については、後ほど解説します。
参考:No.4141 No.4155 相続税の税率 – 国税庁
亡くなった人の確定申告(準確定申告)は、相続が発生してから4か月以内に相続人が代わりに済ませる義務があります。
もちろん故人の確定申告が必要ないケースもあります。しかし故人が自営業などで生前から確定申告をしていたのであれば、申告が必要となる場合が多いでしょう。
故人にある程度の収入があった場合、当然ながら確定申告をするときに所得税が課税されます。
ところが遺贈寄付をした分の金額は、一定の要件を満たせば「寄付金控除」として所得税から控除することが可能です。
つまり所得税の課税額を少なくでき、実質的に相続財産を増やせるということです。
この寄付金控除は通常の確定申告でも適用できるので、相続人が財産を相続した後で寄付をする場合にも有効な方法です。
参考:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除) – 国税庁
遺贈寄付は、人生の最後にご自身の想いを実現する手段の一つです。
日頃から、特定の分野や地域のために役立ちたいという想いを抱いている人は多いでしょう。
しかし生きている間は日々の生活のこともあり、ボランティアへの参加や寄付を実行するのは難しいものです。
そのような場合でも、遺贈寄付をすることで、亡くなった後に残る財産の一部を社会の役に立てることができます。
遺贈寄付をする金額は、大きくなくてもかまいません。
少額でも遺贈寄付を受け付けている団体は多くあるため、金額がわずかであっても社会貢献の気持ちを反映させることが可能です。
相続人のいない、いわゆる「おひとりさま」の方が亡くなると、遺産は国庫に納められます。
国庫に納められた遺産は、国の財産としてさまざまな用途に使われるため使い道を指定することはできません。
そのことを考えて、むなしい気持ちになってしまう方もおられます。
しかし遺贈寄付をすれば、遺産の使い道をご自身で決めることが可能です。
応援したい分野や恩返ししたい地域、関心のある団体などに寄付すれば、満足感も得られるでしょう。
ご自身が遺贈寄付をした事実は寄付先とそこに関わる人々の記憶に残り、生きた証を残すこともできます。
遺贈寄付をするためには、寄付先選びや遺言書の作成など、生前から準備しておく必要があります。
その際は、次のようなポイントをおさえることで遺贈寄付のメリットを活かせます。
遺贈寄付をするうえでは、相続人や寄付先への遺産配分を生前から考えておく必要があります。
その際、相続人となる家族の心情にも配慮しておくことが大切です。
残された家族にはそれぞれの生活があるため、財産が残っていることで助かる場合も多々あります。
多額の財産を寄付することも立派ですが、たとえ少額でもその想いは伝わります。
各相続人が納得できるように、残った財産があれば寄付するくらいの気持ちで遺産を配分するようにしましょう。
また、後々になって驚かれないように、財産の一部を遺贈寄付することくらいは、家族に伝えておくことをおすすめします。
配慮が必要なのは、遺族の心情だけではありません。
遺産の分配を考えるときは、「遺留分(いりゅうぶん)」にも注意する必要があります。
遺留分とは、相続人が最低限もらえる遺産の取り分のことです。
各相続人の取り分は家族構成によって変わりますが、以下の人には法律で遺留分を請求する権利が認められています。
・配偶者
・子、孫
・父親、母親、祖父母
この遺留分は、遺言書の内容よりも強い力を持っている権利です。
もし遺留分まで寄付した場合、相続人が遺留分を取り戻す請求を寄付先へする可能性もあります。
善意で寄付したつもりが、かえって迷惑をかけてしまわないように注意しましょう。
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遺贈寄付による節税メリットを得たい場合は、税金の控除を受けられる団体を選ぶ必要があります。
相続人が財産を相続した後で寄付をする場合の「相続税の控除」、亡くなった後の確定申告での「所得税の控除」は、対象となる団体・組織が決まっています。
対象となるのは、次のような団体・組織です。
・国
・地方公共団体
・認定NPO法人
・特定の公益法人(一般社団法人および一般財団法人を除く)
これら以外の個人や団体に寄付した場合は、税金の控除を受けられない可能性もあります。
慈善事業を行っている団体であっても、認定を受けていないNPO法人や宗教法人などは対象外なので注意が必要です。
参考:No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき – 国税庁
財産を遺贈寄付できるかどうかは、生前から寄付先に確認しておきましょう。
なぜなら寄付先の団体や組織によって、遺贈寄付を受け入れる条件が決まっているからです。
たとえば価値が変動する不動産や有価証券(株式など)は、現物のまま受け取ってくれない場合も多々あります。
また、相続トラブルに巻き込まれたくないなどの理由で遺贈寄付を受け付けていない団体もあります。
善意の押し付けになってしまわないよう、寄付先の事情に配慮することも大切です。
寄付先への配慮という点では、遺贈の方法にも気を使う必要があります。
具体的には、「包括遺贈」ではなく「特定遺贈」をするべきと言えるでしょう。
そもそも遺贈には、大まかに次の2種類があります。
・特定遺贈 … 現金・不動産など、特定の財産を選んで遺贈する方法
・包括遺贈 … 総額の4分の1など、財産の割合を決めて遺贈する方法
上記のうち包括遺贈をすると、寄付先の団体が相続人と同等の地位を得ることになります。
その場合、寄付先が借金などのマイナスの財産も引き継いでしまうことになったり、相続人と遺産分割協議をしなければならなくなったりするケースもあります。
寄付先の負担を減らすためにも、全財産を寄付する場合や相続人がいない場合を除いて、特定遺贈が好ましいでしょう。
不動産や有価証券を現物のまま受け取ってくれる団体であっても、現金化して遺贈するほうが良いケースも多くあります。
なぜなら現物の財産に含み益があった場合、税制上は時価で譲渡したとみなされ、相続人に課税されるからです。
つまり不動産や有価証券が入手したときよりも値上がりしていれば、相続人は手に入らない現物のために税金だけを支払うことになります。
こういったケースでは、困った相続人が遺贈寄付した団体に返金を求めるなどのトラブルも起こりかねません。
先祖代々から引き継がれてきた土地や、昔から保有していた株式などは、取得価格が低いケースが多いため確認が必要です。
参考:法人に対する不動産の遺贈に係るみなし譲渡所得課税に関する問題点-受贈法人への遺留分減殺請求が行われた場合を中心に – 国税庁
最後にもう一度、「遺贈寄付のメリット」についておさらいしましょう。
・相続をさせる財産が高額な場合は、遺贈寄付によって「相続税を節税」できる
・亡くなった後の確定申告で寄付をすれば、「所得税を節税」できる
・遺贈寄付には、「自分の想いを実現できる」「遺産の使い道を自分で選択できる」などのメリットもある
・遺贈寄付を準備するときは家族の心情へ配慮し、遺留分に気をつける
・節税効果を期待する場合は、税金の控除が受けられる団体を選ぶ
・遺贈寄付をする財産の種類や遺贈の方法には注意し、生前から寄付先に確認をとっておく
上記のように遺贈寄付にはさまざまなメリットがある一方で、気をつけるべきポイントも多くあります。
もし分からないことがあれば、税務署に問い合わせたり専門家に相談したりすることをおすすめします。
しっかりと準備したうえで、ご自身の想いを実現してください。
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