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2022.07.07
生前整理のお役立ちコラム
 

生前整理で残す遺言は公正証書が良い?メリット・作り方・費用などを紹介

生前整理で遺言を残す際、公正証書遺言を選ぶ人が増えています。

 

とはいえ、公正証書遺言について次のような疑問が浮かぶ方もいるのではないでしょうか。

 

「法律的にどのような効力があるの?」

「費用や手続きは?」

「自分で作れる?」

 

公正証書遺言は法的な効力が高いものの、作成に手間や費用がかかることも事実です。

 

今回は、「公正証書のメリット・デメリット」「手続きや費用」について詳しく紹介します。

 

私は、プロとして生前整理のお手伝いをしている者です。現場で培った知見もまじえながら解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

生前整理で残す遺言は公正証書が良い?【メリット・デメリット】

 

そもそも、なぜ生前整理の際に公正証書遺言を残す人が多いのでしょうか。

 

ここでは他の遺言書の種類も紹介したうえで、公正証書遺言を選ぶメリット・デメリットを紹介します。

 

遺言書の種類

遺言書の種類には、次の3つがあります。

 

・公正証書遺言:2名の証人が立ち会いのもと、遺言内容を公証人に伝えて代筆してもらう形式

・自筆証書遺言:紙とペン、印鑑を使い自筆で書く形式。特別な手続きは不要

・秘密証書遺言:2名の証人が立ち会いのもと、自作した遺言書を公正役場に持ち込み、遺言書の存在を認めてもらう形式

 

この3つの遺言書の大きな違いは、必要な手続きにあると言えます。

 

自筆証書遺言は特別な手続きをせずに作成することも可能ですが、公正証書遺言や秘密証書遺言は公証役場での手続きが必要です。

 

なお、秘密証書遺言は内容に不備が生じやすい割に手数料などもかかるので、現在では選ぶ人が少なくなっています。

 

遺言書を作るのであれば、自筆証書遺言もしくは公正証書遺言のどちらかを選ぶ場合が多いでしょう。

 

ちなみに公証役場とは法務局が管轄する官公庁で、おもに公正証書(内容を公的に証明するための書類)を取り扱っている機関です。

 

公証人は法務大臣が任命した準国家公務員で、公証役場で公正証書を作成・発行する業務を行っています。

 

公証人はただの公務員ではなく、裁判官や検察官または弁護士の経験がある人の中から任命されるのが一般的です。

 

生前整理で遺言は残しておくべき?メリット・書き方・注意点などを解説

遺言書

 

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言のメリットは、次のとおりです。

 

・内容に不備が生じにくく、効力を疑われる可能性が低い

・紛失や改ざんの恐れがない

・検認(遺言書の開封手続き)が必要ない

・手や耳、口が不自由な人でも作れる

 

公正証書遺言は、本人が遺言内容を公証人に伝える形で作られます。

 

法務に長けた公証人が代筆するので内容に不備が生じる可能性が低く、法的な効力を疑われる可能性も低いことは大きなメリットです。

 

これが自筆証書遺言だと、自分で作成するため内容に不備が生じる可能性も高くなります。

 

作成した後のことを考えても、公正証書遺言にはメリットが多くあります。

 

公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、紛失したり、改ざんされたりする恐れもありません

 

また、ご自身が亡くなった後に遺族が「検認」と呼ばれる開封手続きをする必要もありません

 

他の形式の遺言書だと、遺族が開封するときに家庭裁判所で検認手続きをしないと法律違反になる可能性もあります。

 

なお、公正証書遺言は公証人が代筆するので、手が不自由で字を書けない人でも作成することが可能です。

 

耳や口が不自由な場合でも、通訳を介して作成できる場合もあります。

 

遺言書を見つけた場合の取り扱い方とは?正しい開封方法と検認手続きを解説

遺言書と印鑑

 

公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言のデメリットは、次のとおりです。

 

・作成に時間や手間がかかる

・作成に費用がかかる

・2名の証人を確保する必要がある

 

手続きや費用については後ほど詳しく解説しますが、公正証書遺言を完成させるには、少なくとも2回は公証役場へ通うのが一般的です。

 

公証役場での手続きが必要な以上、手数料や書類の取得費用、場合によっては弁護士などへの依頼費用も必要になります。

 

自分で作成できる自筆証書遺言と比べれば、手続きや費用面での負担は大きいと言えるでしょう。

 

加えて、証人が2名必要な点もデメリットと言えるかもしれません。

 

証人は、遺言が本人の意思によって作られていることを証明するために必要です。

 

証人は遺産相続に利害関係のない第三者でなければならないと法律で決まっているので、確保が難しい場合も多々あります。

 

公証役場で証人を紹介してもらうことも可能ですが、これにも費用がかかります。

 

生前整理で公正証書遺言を作る方法【手続き・費用】

 

公正証書遺言の作成に手間や費用がかかることは、ここまでにお伝えしました。

 

実際にどれくらいの時間や費用がかかるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

 

具体的な手続きの流れや費用は、次のとおりです。

 

作り方・手続きの流れ

公正証書遺言を作る場合、次のような流れで手続きを行います。

 

1.遺言の原案(誰にどの財産を相続させるか)を考えてメモする

2.公証役場に連絡し、遺言内容を公証人に伝えて確認してもらう

3.必要書類を集め、公証役場に届ける

4.作成時に立ち会う証人2名を確保する

5.公証人や証人のスケジュールを確認し、公証役場へ行く日取りを調整する

6.証人2名の立ち会いのもと公証役場へ行き、公正証書遺言の内容を確認、署名する

7.公正証書遺言の正本を受け取り、手数料を支払う

 

相続人の数や財産の種類などによって異なりますが、上記の手続きを全てこなすためには短くても2~3週間かかります。

 

公証役場は平日しか営業していないので、平日に時間が取りづらい場合は作成期間をより長く見積もっておく必要もあるでしょう。

 

必要な書類

公正証書遺言の作成に必要な書類は、一般的には次のとおりです。

 

・遺言者本人を確認する資料(印鑑証明や運転免許証など)

・遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本

・相続人以外の人に遺贈する場合は、その人の住民票(法人の場合は資格証明書)

・財産に不動産が含まれる場合は、登記簿謄本および固定資産税納税通知書などの課税証明書類

・不動産以外の財産を確認できる資料やメモ

・証人の名前、住所、生年月日および職業を確認できる資料やメモ

 

これらの書類を集めるためには、市町村役場や法務局を巡る必要があります。

 

なお、上記はあくまで最低限必要な書類です。公証役場や遺言内容によって異なる場合もあります。

 

参考:必要書類 - 日本公証人連合会

必要な費用

公正証書遺言を作成する場合、さまざまな費用がかかります。

 

最低限必要な費用とその目安は、次のとおりです。

 

・作成手数料、用紙代:40,000~100,000円

・必要書類の取得費用:2,000~5,000円

 

状況によっては、次の費用もかかります

 

・証人の日当:15,000~30,000円

・弁護士などへの依頼費用: 100,000~200,000円

・公証人の出張費:30,000~70,000円

 

公証役場で証人を紹介してもらう場合は、証人への日当を支払う必要があります。

 

また、弁護士や司法書士に依頼して作成する場合は、その依頼費用も必要となります。

 

もし公証役場以外の場所で作成したい場合は、公証人の出張費(日当や交通費)を支払って出張してもらうことも可能です。

 

なお、ここで紹介した費用はあくまで目安です。相続人の数や財産の種類、その他さまざまな状況によって変わる場合もあります。

 

参考:Q7.公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらい掛かるのですか - 日本公証人連合会

 

生前整理で公正証書遺言を作るときのポイント【注意点】

 

手間や費用がかかるぶん確実性の高い公正証書遺言ですが、作成時にいくつか注意すべき点があります。

 

具体的には次のとおりです。

 

証人になれる人には条件がある

次のような人は、証人になれないと法律で決められています。

 

・未成年者

・推定相続人(将来相続人になる予定の人、配偶者や子供、親、兄弟姉妹など)

・受遺者(相続人以外の遺産を受け取る人)とその配偶者、子、孫、父母などの直系血族

・公証人の配偶者、4親等以内の親族、書記、雇人

 

もしこれらの条件にあてはまる人を証人にした場合、遺言が無効になってしまう可能性もあるので注意しましょう。

 

上記からも分かるとおり、遺産相続に利害関係がある人はなれないので、第三者を証人として2人以上確保する必要があります。

 

実際にはなかなか難しいので公証役場で紹介してもらったり、依頼した弁護士事務所の人に証人になってもったりする場合も多々あります。

 

参考:(証人及び立会人の欠格事由)民法第九百七十四条

 

遺言の内容よりも遺留分が優先される

公正証書遺言は確実性の高い遺言形式ですが、どんな内容でも従わせられるわけではありません。

 

遺留分を侵害する部分の内容は、無効となってしまう恐れがあります。

 

遺留分とは各相続人が最低限相続できる割合のことで、その割合は法律で決められています。

 

たとえば配偶者1人と子ども2人が残された場合、配偶者が2分の1、子どもが4分の1ずつ財産を相続できる権利があります。

 

もし「全ての財産を長男に譲る」という内容の遺言を残したとしても、他の家族が訴えを起こして遺留分を主張することも可能です。

 

後々にトラブルが起きないよう、遺留分にも配慮した遺言書を作成することが重要と言えるでしょう。

 

法定相続人とは?対象者や相続の優先順位と割合を遺品整理士が解説!

相続

 

遺産の分け方は公証人に相談できない

公正証書遺言を作る際は、「誰にどの財産を相続させるか」という遺言内容の原案をあらかじめ決めておく必要があります。

 

公証人は、あなたが考えた原案を法律的に不備が起きにくいように清書して体裁を整えてくれる存在です。

 

しかし、「どのように遺産を分配すれば後々にトラブルが起こりにくいか」「どうすれば相続税対策ができるか」といった遺産の分け方は公証人へは相談できません。

 

自分だけで作成手続きをすることも可能ですが、こういった遺産の分け方を相談したい場合は弁護士や司法書士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。

 

専門家と相談しながら原案を決めれば、相続トラブルが起きにくい遺言書を作成することが可能です。

 

また、証人の確保や書類の取り寄せなどのサポートを受けられることも多いので、手間を省きたい場合にも有効と言えます。

 

【まとめ】相続トラブルを防ぎたいなら公正証書遺言の作成を検討しよう

 

最後にもう一度、「生前整理と公正証書遺言」についておさらいしましょう。

 

・公正証書遺言のメリットは内容に不備が生じる可能性が低く、紛失や改ざんの恐れがない点

・デメリットは作成に手間や費用がかかるうえ、証人を確保する必要がある点

・作成には短くても2~3週間かかり、費用は数万~数十万円かかる

・証人になれる人には条件があるが、公証役場や弁護士事務所で紹介してもらうことも可能

・遺留分を侵害する内容は一部無効となるので注意が必要

・誰にどの財産を相続させるかを相談したい場合は、専門家へ依頼したほうが良い

 

公正証書遺言はその確実性の高さから、選ばれることの多い遺言形式です。

 

相続トラブルを防ぎたい場合は、ぜひ作成を検討してみてください。

 

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生前整理では、遺言を残す以外にもやるべきことが多くあります。

 

そのなかでも大変なのが、物の整理ではないでしょうか。

 

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