近年、故人が飼っていたペットの扱いに悩む遺族が増えています。
遺族が飼えるのであれば問題はないのですが、次のような事情で引き取りが難しい場合もあるでしょう。
「賃貸に住んでいるので飼えない」
「家族がアレルギーを持っている」
「健康上の理由で世話を続けられる自信がない」
結論からいえば、遺族が飼えなくても、故人のペットの引き取り先を見つけることは可能です。
今回は、「故人のペットと相続の関係」や「故人のペットを飼えない場合の対処法」について解説します。
遺品整理業者として働いている私の知見もまじえながら解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
人間味のない話ですが、日本の民法上、ペットは「物」として扱われます。
つまり故人のペットは、個人の財産として相続人が相続することになります。
特別な事情がない限り、故人の子や孫、兄弟などの親族が相続人となるのが一般的です。
そのため故人の親族の方は、責任をもってペットの処遇を考えてあげる必要があるでしょう。
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故人が借金を抱えていたなどの事情で、相続放棄を考えている方もいるかもしれません。
その場合に問題となるのが、ペットを引き取ったり、誰かに譲ったりしたら単純承認(相続する意思があると認める行為)になるのではないか、という恐れです。
もし単純承認とみなされると、相続放棄が却下されてしまいます。
しかし実際は、ペットを引き取っても相続放棄が却下されるケースは少ないといえます。
なぜなら家庭裁判所の判断基準は、財産の処分や申請期間についてが主だからです。
ただ、専門家によって見解が異なる場合もありますので、このような事態になった場合は早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
ちなみに、残されたペットに対してエサをやることは、財産の処分行為ではなく「保存行為」と考えられるため、問題とならないとケースがほとんどです。
ペットも命ある生き物ですから、処遇が決まらないあいだも、ぜひ世話をしてあげてください。
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故人のペットを飼えない場合、保健所・動物愛護センターに引き渡すことを考える方もいるでしょう。
しかし、これらの施設にペットを引き渡すのは、おすすめできません。
なぜなら、これらは飼えなくなったペットを引き取るための施設ではないからです。
たとえ引き取ってくれたとしても、ペットが悲しい目にあう確率が高いといえます。
保健所は、地域住民の健康と安全を目的とした公的機関です。
保健所が野良犬や野良猫を引き取ったり、狂犬病予防などの業務を行っていたりするのは、あくまで地域の衛生環境を保つためです。
動物のことを第一に考えた施設ではないため、故人のペットを引き取ってもらっても簡単に殺処分されてしまう可能性があります。
最近では、動物愛護センターを設けている自治体が増えています。
動物愛護センターとは、法律や条例にもとづき、動物の愛護および管理を行っている公的機関です。
名前からして、行き先のないペットを助けてくれそうな気がします。
実際に、捨てられる犬猫を減らすための活動や、保護した動物の里親募集などを行っている動物愛護センターも多くあります。
しかし税金で運営されている以上、予算や人手、収容能力には制約があります。
そのため、里親の見つからなかった動物をいつまでも保護し続けるわけにもいかず、少なくない数の犬・猫が最終的に殺処分されている現実があります。
地域の保健所や動物愛護センターに頼らなくても、故人のペットの引き取り先を探すことは可能です。
遺族が飼えないときは、次に紹介する中から引き取り先を探してみてください。
まずは友人や知人、近所の方などに声を掛けて、身近で引き取ってくれる人を探してみましょう。
案外、動物好きの人は多いので、新たな飼い主として名乗りを上げてくれる人が見つかるかもしれません。
身近で引き取ってくれる人が見つかれば、人となりが分かるので安心して譲れます。
もし、かかりつけの動物病院が分かる場合は、連絡を取ってみても良いでしょう。
近頃は、ペットの里親探しに積極的に取り組んでいる動物病院も多くあります。
故人のペットを引き取ってくれる人が身近で見つからない場合は、インターネットを利用する方法もあります。
「犬 里親募集」などと検索すれば、ペットの里親を募集するためのサイトが多く見つかります。
利用方法もそれほど難しくはなく、会員登録をしてペットの情報や写真をアップロードするものが主流です。
もしSNSを使いこなせるのであれば、ペットの写真や情報を載せて里親を探すのも一つの方法でしょう。
どちらの方法もすぐに引き取り手が見つかる保証はありませんが、無料もしくはほとんど費用がかからない点は大きなメリットです。
ある程度の費用をかけられる場合は、老犬ホーム・老猫ホームにペットを預ける方法もあります。
これらの施設は、高齢の犬・猫を飼い主の代わりに世話や介護してくれる、いわばペット版の老人ホームです。
費用は年間で数十万円~100万円前後と幅がありますが、終身で面倒を見てくれる施設もあります。
ただ、基本的に高齢の犬・猫しか、終身で預けられない点には注意が必要です。
もし故人のペットが若い犬・猫の場合は、数か月などの期間限定で預けることしかできないので、その間に新しい飼い主を探す必要があります。
一部の小動物や鳥類、は虫類、両生類などのペットは、体感型の動物園・牧場で引き取ってくれる場合があります。
費用は、無料もしくは数万円ほど必要なケースなど、施設によってそれぞれです。
引き取り可能な場合は、たいていホームページに記載があるので、確認して問い合わせてみましょう。
どうしても引き取り先が見つからない場合は、動物愛護団体やNPO法人に相談するのも一つの方法です。
遺族の事情や団体の状況によっては、故人のペットを引き取ってもらえる可能性があります。
動物愛護団体やNPO法人では、新しい引き取り手に対して条件を課している場合が多いので、安心感もあります。
たとえ引き取りが難しくても、里親を紹介してくれるなど、相談に乗ってくれる可能性は高いでしょう。
費用面では、無料で引き取ってくれる場合もありますが、引き取る代わりに寄付が必要なケースもあります。
ただし、これらの団体の活動はボランティアの善意で行われているので、あくまで最終手段として捉えておきましょう。
まずは、先に紹介したような方法で、里親を探してみることをおすすめします。
ペットは故人の大切な家族ですから、できるだけ幸せにしてあげることが良い供養にもなります。
故人のペットを引き取ったり、誰かに譲ったりする際は、次の点に注意して、より良い環境に身を置けるようにしてあげましょう。
身内の方が亡くなった場合、遺族にはやることが多くあります。
そのなかでも故人のペットに関しては、なるべく早く対応してあげる必要があるでしょう。
なぜなら食事や掃除などの世話が不十分だと、ペットが体調を崩したり病気になったりする可能性があるからです。
実際に、遺族の対応が遅れて、故人のペットが衰弱してしまう事例は少なくありません。
遺品整理業者として働く私も、そのような悲しい場面を目にしたことがあります。
多くの場合、ペット自身も飼い主がいなくなったことに不安を感じています。
ペットに与えるストレスを減らすためにも、できるだけ早くに環境を安定させてあげることが大切です。
最近は、故人が遺言書やエンディングノートなどを遺すことが増えてきました。
もし、これらの書類が見つかった場合は、ペットについての情報が書かれていないか確認してみてください。
誰々にどうやって世話をしてもらいたい、などの希望が書かれていることもあります。
また、ペット信託などの制度を利用して、ペットのための財産を遺している場合もあります。
このような遺言が確認できれば、ペットの処遇についてより早く対応することが可能です。
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故人のペットについて、次のような情報を、できるだけ多く把握しておくことが大切です。
・名前や種類、年齢、性別
・血統書はあるか
・病歴や健康状態、かかりつけの動物病院
・避妊手術をしているか
・普段食べているもの
・ペット保険に加入しているか
遺族が飼うにしても、誰かに引き取ってもらうにしても、これらの情報を把握しておくことで飼育しやすくなります。
また、引き取り先が見つかりやすくなったり、引き渡しがスムーズに進んだりする場合も多いです。
全てを把握することは難しいかもしれませんが、遺された書類を確認したり、故人が生前に話していたことを思い出してみたりしましょう。
最後にもう一度、「故人のペット」についておさらいしましょう。
・故人のペットは、財産として相続人が相続する
・相続放棄をしても、故人のペットを引き取れる可能性は高い
・ペットを保健所・動物愛護センターに引き渡すと、処分される可能性が高い
・身近な人に声を掛けたり、里親募集サイトを利用したりすることで新たな飼い主を探せる
・費用をかけられる場合は、老犬ホーム・老猫ホームに預ける方法もある
・体感型の動物園や牧場、動物愛護団体などで引き取ってくれる場合もある
ペットは故人が生前、愛情を注いだ大切な存在です。そのペットを大切に扱うことは、故人の供養にもつながります。
ぜひペットも含めて、遺族みんなが幸せになる方法を考えてみてください。
親族の方が亡くなられた場合、ペットの飼い主探し以外にも、遺族がやるべきことは多くあります。
とくに大変なのが、家に遺された物の整理(遺品整理)ではないでしょうか。
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