親から相続した空き家を売却したいと考えたとき、税金が気になって売却に踏み切れない方は多いのではないでしょうか。
たとえば、次のような疑問も抱いている方もいるかもしれません。
「空き家を売却したらどんな税金がかかる?」
「税額や税率はどれくらい?」
「節税する方法はないの?」
実は空き家の売却では、原則として数十%の税金が引かれてしまいます。
しかし相続した空き家であれば、「空き家特例」という制度を利用して大幅な節税をすることが可能です。
今回は、「空き家の売却にかかる税金の種類、計算方法」「空き家特例の適用条件、手続方法」などについて解説します。
プロとして日頃から遺品整理に携わっている私が分かりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
空き家を売却した場合、どんな税金がいくら位かかるのかご存知でしょうか。
実は一口に税金といっても、次のように複数の種類があります。
・譲渡所得税
・住民税
・印紙税・登録免許税
ひとつずつ解説していきます。
空き家の売却にかかる税金の中でもっとも金額が大きいのは、譲渡所得税です。
譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課税される税金です。
譲渡所得税の金額は、「譲渡所得×税率」という計算式で計算できます。
税率は次のように、不動産を所有していた期間によって異なります。
・所有期間が5年以下(短期譲渡所得):30.63%
・所有期間が5年超(長期譲渡所得):15.315%
(2037年12月31日までの税率:復興特別所得税を含む)
相続した空き家を売却する場合、保有期間には親が実家を所有していた期間も含む点には注意が必要です。
なお上記のとおり、2037年までに売却した場合、税率には復興特別所得税と呼ばれる、東日本大震災の復興財源として利用される税金が含まれます。
空き家の売却にかかる税金で、二番目に金額が大きいのが住民税です。
住民税の金額もまた、「譲渡所得(売却で得た利益)×税率」という式で計算できます。
税率は、次のとおり所有期間によって異なります。
・所有期間が5年以下(短期譲渡所得):9%
・所有期間が5年超(長期譲渡所得):5%
住民税を計算するときの所有期間もまた、親が実家を所有していた期間を含みます。
なお、空き家を売却したときにかかる住民税の税率は、普段の生活で私たちが支払っている住民税とは異なる点に注意が必要です。
通常の住民税率は所得の金額によって変動しますが、不動産売買に関わる住民税は上記のとおり一定の税率です。
譲渡所得税や住民税に比べると金額は少ないものの、空き家の売却時に印紙税・登録免許税を負担することもあります。
印紙税とは、不動産の売買契約書などに貼る収入印紙代のことです。
具体的な税額は、次のとおり契約書に記された契約金額によって異なります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(2022年3月31日まで) |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
上のとおり、2022年3月31日までに売却した場合は、軽減税率が適用されます。
いっぽうで登録免許税とは、名義変更の登記をするときに支払う税金のことをいいます。
税額は「固定資産税評価額×税率」で計算できます。
税率は次のとおりです。
・不動産の価格の2%
(土地の部分に関しては、2022年3月31日までは軽減税率適用のため1.5%)
固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する元となる物件の評価額で、各自治体が毎年個別に決定している数値です。
具体的な固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に付いている課税明細を見るか、各自治体の役所で固定資産課税台帳を閲覧することで確認できます。
なお、印紙税や登録免許税は、空き家を売る側ではなく、買う側が負担することもあります。
法律上では売主と買主は対等の立場とされるため、どちらが負担するかは個々の売買によってさまざまです。
売主と買主が話し合って決めたり、仲介する不動産会社の方針によって決まったりします。
先ほども述べたとおり、譲渡所得税も住民税も「譲渡所得(売却で得た利益)×税率」で計算されます。
つまり課税額を知るためには、譲渡所得の求め方を知る必要があるといえるでしょう。
譲渡所得は、以下の式で計算できます。
・譲渡所得 = 売却額-(取得費+経費)
それぞれの項目を説明すると、次のとおりです。
・売却額…実際に家が売れた金額
・取得費…不動産を取得したときにかかった金額(土地・建物などの購入費、リフォーム費、名義変更の登記費用など)
・経費…売却にかかった経費のこと(不動産会社への仲介手数料など)
ただ、親から相続した土地や建物の場合、そもそもの購入費用が分からない場合が多々あります。
そういった場合は「概算法」といって、売却金額の5%を取得費として計算することができます。
先ほどの計算方法で、大まかな譲渡所得を把握することは可能です。
しかし正確な譲渡所得の金額を把握するとなると、取得費から減価償却費相当額を差し引く必要があります。
減価償却費相当額とは、時間の経過によって減額された建物の価値のこと。
居住用の空き家を売却する場合は、「建物の取得価格×0.9×償却率×経過年数」で減価償却費相当額が求められます。
償却率は建物の構造によって変わりますが、木造の場合は0.31 %です。
上記のとおり具体的な課税額を把握するには、複雑な計算が必要です。
大雑把でもいいので簡単に把握したい場合は、売却額から経費や経費を差し引いた価格よりも少し安くなると覚えておくと良いでしょう。
ここまで述べたとおり、空き家を売却するとそれなりの金額が課税されることになります。
しかし「空き家特例」という控除制度を適用できれば、税金を大幅に安くすることが可能です。
概要や適用の条件、手続きについて解説するので、ぜひ確認してみてください。
「空き家特例」とは、相続した空き家が一定の条件をみたしていれば、譲渡所得(売却によって得た利益)から最高3,000万円までを控除できる制度のことです。
正式には、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
以前から、自宅を売却した場合に3,000万円の特別控除が受けられる制度はありました。
しかし、相続した空き家を売却した場合の控除制度はなかったのです。
ところが近年、空き家の増加によってさまざまな問題が起きているため、空き家を減らすために新しい制度が設けられました。
それが、この「空き家特例」で、2023年12月31日まで適用できる特例となっています。
参考:国税庁 - 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
この空き家特例を利用した場合、売却にかかる税金を大幅に安くできます。
たとえば空き家を売却した際に、取得費や経費を差し引いてちょうど3,000万円の売却益が出たとしましょう。
この空き家の所有期間が5年以上の場合、譲渡所得税と住民税で合計20.315%、つまり約609万円もの税金がかかります。
しかしこの特例を適用できれば、その課税額がゼロになるのです。
たとえ売却によって得た利益が3,000万円以上でも、3,000万円を超えた部分にしか課税されないので、納める税額が大幅に減ることはまちがいありません。
とはいえ、この「空き家特例」は無条件で利用できる制度ではありません。
適用するためには、次のような条件を満たす必要があります。
・相続によって取得した土地および家屋であること
・相続開始の直前に被相続人(故人)以外に住んでいた人がいなかったこと
・昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
・区分所有建物登記がされている建物(マンションなど)ではないこと
・売買代金が1億円以下であること
・相続開始から3年後の年末までに売却すること
・建物を取り壊すか又は耐震リフォームをしてから売却すること
空き家特例は、相続するまで故人が一人で住んでいて、なおかつ亡くなった後に空き家となる家が対象です。
故人がその家に住んでいなかったり、同居人がいたりした場合は適用されません。
ただし例外として、親が要介護認定を受けて老人ホームなどに入居して空き家となる場合に、それまで親が家で一人暮らしをしていたのであれば適用できます。
なお、空き家特例は耐震基準の低い建物を減らすことも目的としているので、耐震基準の適合証明をとってから売却するか、取り壊して更地にしてから売却する必要があります。
取り壊しに関しては、売却前に取り壊す必要があるほか、取り壊し費用は原則として売主が負担する点には注意が必要です。
空き家特例の適用を受けるには、売却した翌年の確定申告の時期(2月半ば~3月半ば)に次の書類を税務署に提出する必要があります。
・確定申告書
・被相続人居住用家屋等確認書(市区町村で発行可能)
・譲渡所得の内訳書(明細書)
・売買契約書のコピー
・登記事項証明書(法務局で発行可能)
・耐震基準適合証明書(更地にする場合は不要)
上記のとおり、空き家特例の適用を受けるには、普段は確定申告をしていない会社員の方なども、確定申告をする必要がある点には注意が必要です。
また、手続きには時間がかかるので、計画的に動くことが大切といえるでしょう。
必要書類を揃えるためには、空き家の所在地の市区町村役場や法務局にも通う必要があります。
先ほども述べたとおり、空き家特例には申請期限があるので、早めに動くことが大切です。
とはいえ、もし空き家特例を適用できなくても、空き家対策に関しては早めに行うべきといえます。
なぜなら空き家を放置すると、次に紹介するようなデメリットが発生するからです。
空き家を放置すると、次のような問題が起きやすくなります。
・税金が高くなる恐れがある
・雑草や木が伸び、隣近所に迷惑がかかる
・放火やイタズラをされる恐れがある
・他人や動物が住みつく恐れがある
・劣化が進むことで売買や賃貸が難しくなる
家を相続した場合、固定資産税を支払っていく必要があります。
もし自治体から「特定空家」に指定された場合、その固定資産税の金額が6倍にも跳ね上がります。
特定空家とは、管理が不十分で周囲に悪影響を与える恐れのある空き家のことです。
そういった処分が下されなくても、人が住まなくなった家は劣化しやすいため、さまざまな弊害が出やすくなります。
空き家問題は早めに手を打とう!現状と原因、特定空家による恐れや対策を解説
空き家を処分するにしても、維持して利用するにしても、それなりの準備が必要です。
その中でも大変なのが、物の整理や処分でしょう。
親が長年住んでいた実家には、さまざまな家財道具や雑貨、書類などが大量に残されているはずです。
遺品整理を兼ねてそれらの品物を片付けると、数ヶ月~1年かかるケースもよくあります。
もし実家が遠方にあったり、時間や人手が足りなかったりする場合は作業を進めることすら困難かもしれません。
そのような場合は、私が働いているような遺品整理業者に依頼するもの一つの方法です。
遺品整理業者に依頼すれば、次のようなメリットがあります。
・物の仕分けから処分、清掃まで全て任せられる
・1日~数日で作業が完了する
・重要書類や貴重品の探索も行ってくれる
・遺品整理の疑問や悩みを相談できる
遺品整理業者は普通の片付け業者と違い、遺品整理の経験や知識を持っています。
物を遺品として大切に扱ってくれますし、遺品整理士がいる業者なら遺品整理の悩みを相談することも可能です。
相談料は無料の業者も多いので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
【結論】遺品整理の日数は1週間から1年かかる場合も【業者がおすすめ】
最後にもう一度、空き家の売却にかかる税金ついておさらいしましょう。
・空き家の売却にかかる税金のなかでも、譲渡所得税・住民税は負担が大きい
・相続した空き家なら、「空き家特例」で譲渡所得税・住民税を大幅に安くできる
・空き家特例には、細かな適用条件があるので確認が必要
・空き家特例の適用を受けるには、売却した翌年に税務署へ書類を提出する必要がある
・空き家の放置にはさまざまなデメリットがあるので、売却するかどうかに関わらず早めの対策を
もし空き家の片付けに困ったら、ぜひ遺品整理業者に相談してみてください。
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