遺品整理中に故人の借金が見つかるケースはよくあります。
実際、遺品整理業者として働く私のもとにも、故人の借金について次のような相談がよく寄せられます。
「どうすれば借金の相続を回避できる?」
「相続放棄をするなら遺品整理はしてはいけない?」
「遺品整理後に借金が発覚したらどうする?」
ご存じの方もいるかもしれませんが、相続放棄などの手続きをすれば借金の相続は回避できます。
しかし注意点を守らなければ相続放棄を完了できない可能性もあるため、慎重に遺品整理を進めることが重要です。
今回は、「借金の相続を回避する方法」や「遺品整理と相続放棄の関係性」について解説します。
遺品整理のプロとしての知見もまじえながら解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
故人が所有していた財産や物は、家族や親戚などの相続人に相続権が発生します。
もし故人が預貯金や不動産といった「プラスの遺産」だけを所有していたなら、大きな問題は発生しないでしょう。
しかし故人が借金を抱えている場合は、注意が必要です。
なぜなら相続の対象は、借金やローン、家賃の滞納といった「マイナスの遺産」にも及ぶからです。
つまり故人が借金を抱えていた場合は、原則として遺族が借金を返済しなければいけません。
これは、故人が借金の連帯保証人や賃貸借契約の連帯保証人になっていた場合も同じです。
連帯保証人としての地位は相続されるので、借り主が滞納した場合は相続人が返済する必要があります。
この原則を知らないばかりに、相続で負債を抱えてしまうケースは少なくありません。
家族の知らないところで故人が借金を抱えていたケースは、想像以上に多くあります。
万が一故人の借金が発覚した場合は、不要な借金を抱えてしまわないように対策を考える必要があるでしょう。
法定相続人とは?対象者や相続の優先順位と割合を遺品整理士が解説!
故人の借金が発覚したとき、他にも借金を抱えていないか不安を感じる方もいるかもしれません。
すべての借金を100%把握することは不可能ですが、次の方法である程度は調べられます。
・借用書や請求書、督促状がないか確認する
・銀行口座の動きを確認する
・信用情報機関へ情報開示請求をする
故人の借金は、自宅内に残された借用書や請求書、督促状などによって発覚する場合がよくあります。
それらの書類が、故人が住んでいた家の中に残されていないか確認してみましょう。
くわえて、預貯金口座から借金らしきものが引き落とされていないかも確認しておくと安心です。
毎月一定の金額が引き落とされている場合は、借金の返済である可能性があります。
また、銀行ローンや消費者金融、クレジットカードなどについては、以下の信用情報機関へ情報開示請求をすることで調査可能です。
信用情報機関とは、個人の信用情報を業界内で共有するための組織です。
個人の借金の契約内容・支払い状況などが、一定期間、記録として残されています。
そのため情報開示請求を行えば、各機関に加入している銀行や消費者金融、カード会社などの記録を参照することが可能です。
情報開示請求は、必要書類を用意すれば郵送またはWEBで行えます。
もし遺品整理で個人の借金が発覚した場合、相続人は無条件で借金を背負わなければいけないのでしょうか。
いえ、必ずしもそうとは限りません。
現在の法律では、「相続放棄」または「限定承認」の手続きを行うことで、借金の相続を回避することが可能です。
相続放棄とは、相続の権利そのものを放棄することです。
つまり相続放棄を行えば、預貯金や不動産などのプラスの遺産だけではなく、借金やローンなどのマイナスの遺産も含めて全ての遺産の相続を放棄できます。
相続放棄の手続きは、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てることで行なえます。
相続開始のタイミングは「故人が亡くなった日」とされるのが一般的です。
有効期限が短いので、相続放棄を行う場合は早めに弁護士などの専門家へ相談しましょう。
なお、相続放棄をした場合は負債を抱える心配はなくなりますが、プラスの遺産も相続できない点には注意が必要です。
限定承認とは、プラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を返済し、残りを相続することです。
ポイントは、故人から受け継ぐ借金がプラスの財産の範囲内に限定されることです。
つまり、相続人の財産を持ち出してまで弁済する必要はなくなります。
「借金の総額が分からない」「どうしても手放したくない財産がある」といった場合は、限定承認を行うケースがよくあります。
限定承認も、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てることで行なえます。
ただし相続放棄よりも手続きが複雑で時間もかかり、税金が発生する可能性もあるので、より早いタイミングで専門家に相談をする必要があります。
相続放棄について調べると、「相続放棄をするなら遺品整理はできない」といった意見がよく見られます。
これは、なぜなのでしょうか。
その理由や、相続放棄・限定承認をする場合の遺品整理の注意点を解説します。
相続放棄や限定承認が完了する前に遺品整理をすると、これらの手続きが認められなくなる可能性があります。
なぜなら故人の遺産を一部でも処分すると、「単純承認」とみなされるからです。
単純承認とは、プラスの遺産もマイナスの遺産も全て含めて「故人の財産を無条件で相続する意思がある」と認めること。
ひそかに遺品を処分したとしても、法律上は単純承認とみなされます。
そのため相続放棄や限定承認をする予定がある場合は、手続きが受理された後に行なうべきといわれているのです。
もし故人が賃貸住宅に住んでいた場合は、いち早く立ち退きを求められるかもしれません。
しかし、このような場合でも「相続放棄をするから故人の物は処分できない」と大家さんや管理会社に説明する必要があります。
迷惑をかけることになるので、誠意を持って説明し、できるかぎりの協力をすることが大切といえるでしょう。
とはいえ相続放棄の前であっても、経済的な価値のない物の処分、常識的な範囲での形見分けは問題ないとされています。
たとえば、あきらかにゴミだとわかるような物や食品を捨てるといった行為です。
また、売ってもお金にならないような故人の持ち物や写真などを形見として整理することは可能な場合もあります。
ただし、どこまでが常識的な範囲であるかは法律の解釈によって異なります。
また、一般の人から見ると価値がないように思えても、一部の人にとっては市場価値がある物も世の中には存在します。
そのため相続放棄や限定承認を予定しているのであれば、専門家のアドバイスを仰いだうえで遺品整理を行うほうが無難といえます。
【意外と盲点?】相続放棄をするときは遺品整理をしてはいけない理由
遺品整理をしている最中や、遺品整理を終えた後に借金が発覚するケースも少なくありません。
そのような場合、借金を相続するしかないのかと不安に思う方もいるでしょう。
しかし次のような理由で、借金の返済を回避できる可能性はあります。
相続放棄の申し立ては、相続の開始(故人が亡くなったとき)から3ヶ月以内が原則です。
しかし過去には、「借金の存在に気づいてから3ヶ月以内であれば相続放棄が認められる場合がある」という判例が出されています。
つまり、借金の存在を知らなくても仕方がないと認められる状況であれば、遺品整理後でも相続放棄ができる可能性はあるということです。
たとえば故人と疎遠だったり、長く別居していたりしたのなら、故人の借金を知りようがないといえます。
ただし相続放棄も限定承認も、却下されると再申請が不可能な点には注意が必要です。
このようなケースでは、専門家とよく相談して、入念な準備をしたうえで申し立てることをおすすめします。
そもそも相続放棄や限定承認をしなくても、「時効の援用」ができれば借金を返さなくて済む可能性があります。
時効の援用とは、「この借金は時効を迎えているから返済しない」という意思を貸主に伝えることです。
借金は時効を迎えたからといって自動的に消滅するわけではないので、返さない権利を主張する必要があります。
借金の時効は、支払期日から5年以上が経過したときです。
時効の援用通知は、顧客番号・契約番号・契約年月日といった情報を記入し、配達証明付きの内容証明郵便で送ります。
自分で送ることも不可能ではありませんが、弁護士などの専門家に依頼して送ってもらうと確実です。
時効の援用をする場合は、手続きが完了するまで貸主や債権会社とむやみに連絡をとらないよう注意が必要です。
なぜなら先方と話を交わすうちに、借金を返す意思があるとみなされかねない発言・行為をしてしまう可能性があるからです。
借金を返す意思があるとみなされると時効がリセットされ、時効の援用をする権利を失ってしまいます。
先方は債務のプロなので、関係する法律を熟知しています。
「少しでも返してほしい」といわれるケースは多いですが、時効の援用をするためには一円たりとも仕払うべきではありません。
貸主と連絡を取る前に、できるだけ早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
最後にもう一度、遺品整理と借金の関係性についておさらいしましょう。
・故人が所有していた財産は、借金も含めて相続の対象になる
・故人の借金は、督促状や銀行口座の動き、信用情報機関への情報開示請求などで調べられる
・相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てれば、相続放棄または限定承認で借金の相続を避けられる
・手続きが完了する前に遺品整理を行うと、相続放棄や限定承認ができなくなる可能性がある
・借金の存在に気づいてから3ヶ月以内であれば、遺品整理後でも相続放棄が認められる可能性はある
・相続放棄や限定承認をしなくても、時効の援用ができれば借金を返さなくて済む
借金の相続を避けるには、さまざまな点に注意して遺品整理をする必要があります。
専門知識や経験がないと難しいことも多いため、遺品整理士や弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。
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