将来的な相続を見すえ、不動産の生前贈与を検討する方が近年増えてきました。
とはいえその際の手続きに関して、次のような疑問が浮かぶ方は多いのではないでしょうか。
「不動産を生前贈与したら名義変更は必要?」
「具体的な手続き方法は?」
「費用はどれくらい?」
今回は「不動産を生前贈与した場合に名義変更をするべき理由」の解説から始まり、「手続きの流れ」や「費用・税金」について紹介します。
私はプロの遺品整理業者として生前整理のお手伝いをさせていただいている者です。
現場でつちかった知見も活かして解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産を生前贈与した場合、名義変更は義務ではありません。
しかし不動産を生前贈与された人のほとんどは、名義変更(所有権移転登記)を行っています。
なぜなら名義変更をしなければ、贈与を受けた人が所有者であることを第三者に主張できないからです。
不動産の名義変更をしなければ、贈与を受けた人がその不動産を売却したり担保にしてローンを組んだりすることが難しくなります。
その理由は、先ほども説明したとおり名義変更(所有権移転登記)をしないと第三者に所有権を主張できないからです。
そもそも登記簿には、その不動産に関する情報や所有者を一般公開することで安全な取引を実現する目的があります。
そのため実際の権利関係と登記簿の情報が一致していない状態だと、取引に応じてくれない業者がほとんどです。
たとえ売却や担保設定が可能だとしても、一度は贈与を受けた人に名義変更をする必要があるため手間がかかります。
名義変更をしないまま不動産を贈与した人が亡くなった場合、相続トラブルにつながる恐れがあります。
たとえばAさんが、二人の相続人Bさん・CさんのうちBさんに不動産を生前贈与したとします。
この状態で名義変更をしないままAさんが亡くなり、遺産分割の協議が始まったとしましょう。
このときBさんが「不動産は自分のものだ」と主張しても、Cさんは否定することも可能です。
なぜならその不動産の名義をBさんに変更していない場合、Bさんは他の人にその不動産の権利を主張できないからです。
そうなると生前贈与したはずの不動産が相続財産の一部だとみなされ、遺産分割の対象となってしまう可能性もあります。
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不動産を生前贈与した場合の名義変更手続きは、法務局で行います。
具体的な流れは、次のとおりです。
まずは登記申請に必要な書類を集めます。
必要書類としては、一般的には次のとおりです。
・登記済権利証または登記識別情報通知(不動産を取得したときに発行済み)
・登記事項証明書(最寄りの法務局)
・固定資産評価証明書(不動産の所在地の市区町村役場)
・贈与する人の印鑑証明書(住所地の市区町村役場)
・贈与される人の住民票(住所地の市区町村役場)
(※カッコ内は取得できる場所)
それぞれ一通あたり300~600円で発行可能です。
なお、登記済権利証または登記識別情報通知を紛失した場合は再発行できないので注意が必要です。
もし手元にない場合は別の手続きが必要になるので、まずは法務局に相談しましょう。
続いて、贈与契約書を作成します。
贈与契約書とは、生前贈与が行われたことを証明するための書類です。
贈与契約書は必須ではありません。しかし作成しておけば相続トラブルを防止できたり、贈与税の申告時に資料として使ったりすることができます。
贈与契約書に決まった書き方はないものの、最低限次のような項目は書いておいたほうが良いでしょう。
・贈与する人の氏名、住所、実印
・贈与を受ける人の氏名、住所、実印
・贈与契約を結んだ日付
・実際に贈与する日付
・贈与する不動産の情報(種類、所在地、面積など)
・贈与の方法
これらに加えて、不動産を無償で贈与する場合は200円印紙を貼り付ける必要があります。印紙は郵便局コンビニ、法務局などで購入可能です。
なお、贈与契約書は贈与者・受贈者の双方が保管できるよう必ず2通作成しておきましょう。
最後に、贈与する不動産を管轄する法務局に行って名義変更(所有権移転登記)をします。
所有権移転登記の申請は「持ち込み」「郵送」「オンライン」と3種類の方法から選べます。
最も一般的なのは、直接法務局に持ち込む方法です。
持ち込みの場合、先ほど紹介した必要書類に加えて、次の2つの書類を作成して法務局に提出します。
・登記申請書:申請内容についてまとめた申請書
・登記原因証明情報:所有権を移転するにいたった原因を説明するための書類
登記申請書・登記原因証明情報のフォーマットや記載例は、法務局のホームページで確認可能です。
ミスや不足がなければ、これらの書類を提出したあと1~2週間ほどで登記手続きが完了します。
最後に登記識別情報通知を受け取り、登記事項証明書を取得して、登録された情報に間違いがないか確認しましょう。
生前贈与した不動産を名義変更する場合、各種の費用が発生します。
具体的な費用としては次のとおりです。
不動産を生前贈与された人は、贈与税を納める必要があります。
原則として贈与税は1年ごとに計算され、その年に受けた贈与の合計額から基礎控除110万円を差し引いた分に課税されます。
・贈与税=(1年間の贈与財産の合計-110万円)×税率-控除
税率には特例税率と一般税率とがあり、直系尊属(父母や祖父母など)から18歳以上の子や孫に贈与した場合は特例税率、それ以外は一般税率となります。
【特例税率】
・200万円以下:10% (控除なし)
・400万円以下:15% (控除10万円)
・600万円以下:20% (控除30万円)
・1,000万円以下:30% (控除90万円)
・1,500万円以下:40% (控除190万円)
・3,000万円以下:45% (控除265万円)
・4,500万円以下:50% (控除415万円)
・4,500万円超:55% (控除640万円)
【一般税率】
・200万円以下:10% (控除なし)
・300万円以下:15% (控除10万円)
・400万円以下:20% (控除25万円)
・600万円以下:30% (控除65万円)
・1,000万円以下:40% (控除125万円)
・1,500万円以下:45% (控除175万円)
・3,000万円以下:50% (控除250万円)
・3,000万円超:55% (控除400万円)
たとえば親から18歳以上の子どもへ3,000万円の不動産を贈与した場合の税額は、次のように計算できます。
・(3,000万円-基礎控除110万円)×税率45%-控除265万円=1,035万5,000円
なお、贈与税に関しては贈与方法を工夫したり、課税方式を変更したりすることによって負担を減らすことも可能です。
また、そもそも贈与税よりも相続税を納めたほうが負担の少ないケースもあるため、それぞれの事情に合わせて適切な選択をすることが重要と言えます。
生前贈与とは?相続とどっち?非課税・一般的なやり方・注意点も解説
参考: No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)- 国税庁
贈与を受けた不動産を名義変更するときは、登記費用である登録免許税を国に納める必要があります。
登録免許税の金額を求める計算式は、次のとおりです。
・登録免許税=固定資産税評価額×税率
固定資産税評価額とは各市町村が個別に算出している不動産の評価額で、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書にも記載されています。
固定資産税の納税通知書が手元にない場合は、役所で固定資産税評価額を確認することも可能です。
税率に関しては、所有権移転の原因によって異なります。
相続による所有権移転は税率0.4%ですが、贈与による所有権移転の場合は土地・建物ともに税率2%です。
たとえば固定資産税評価額が3,000万円の土地を生前贈与する場合は、「3,000万円×2%=60万円」の登録免許税がかかる計算になります。
不動産を生前贈与された人は、不動産取得税を都道府県に納める必要があります。
不動産取得税とは不動産を手に入れたことに対する税金で、相続の場合は非課税ですが生前贈与の場合は課税対象です。
宅地及び住宅用の建物の不動産取得税は、次の式で計算されます。
・建物の不動産取得税=固定資産税評価額×3%
・宅地の不動産取得税=固定資産税評価額×1/2×3%
(※令和6年3月31日までの税率)
たとえば固定資産税評価額が2,000万円の住宅と1,000万円の土地を生前贈与した場合、次のとおり合計で75万円の不動産取得税を納める計算になります。
・建物:2,000万円×3%=60万円
・宅地:1,000万円×1/2×3%=15万円
・合計:60万円+15万円=75万円
登記手続きを司法書士へ依頼した場合や、贈与税の申告を税理士に依頼した場合、その報酬も用意する必要があります。
報酬は専門家や依頼内容によって異なりますが、それぞれ5~15万円ほどが相場です。
もちろん生前贈与した不動産の名義変更や贈与税の申告は、自分ですることも可能です。その場合は専門家への報酬は発生しません。
しかし手続きには法律や税制の知識を求められるうえ、平日の昼間に法務局や税務署に行く必要があるなど、自力で行うのが難しい場合もあります。
自分でやると時間や手間がかかりそうな場合は、専門家に代行してもらうことも検討しましょう。
最後にもう一度、「生前贈与した不動産の名義変更」についておさらいしましょう。
・生前贈与した不動産は、名義変更しておかないと売却や担保設定ができない
・名義変更をしないまま不動産を贈与した人が亡くなった場合、遺産分割時に揉める可能性がある
・必要書類を集めたうえで、申請書を作成して法務局に提出すれば名義変更ができる
・名義変更と同時に贈与契約書を作成しておけば、相続トラブル防止や贈与税申告に役立つ
・生前贈与した不動産を名義変更するときは、贈与税・登録免許税・不動産取得税などの税金がかかる
不動産を生前贈与する場合、さまざまトラブルを防止するためにも名義変更することをおすすめします。
自宅の生前贈与や相続を考えるうえでは、家の中の物を生前整理しておくことも大切です。
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