公正証書遺言のメリットの一つとして、「公証役場で厳重に保管される」という点がよくあげられます。
しかし、その保管の仕組みについて、次のような疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。
「亡くなるまで必ず保管されるの?」
「保管に料金はかかる?」
「公正証書以外の遺言は役場に保管できないの?」
今回は「公正証書遺言の保管期間や料金」「公正証書ではない遺言を公的機関に保管する方法」についてお伝えします。
遺品整理業者として現場でつちかった知見もまじえながら解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
公正証書遺言は、作成後に厳重に公証役場で保管されます。
具体的な保管の仕組みは次のとおりです。
公正証書遺言は原本・正本・謄本の3冊がセットで発行されます。
公証役場で保管されるのは、このうち原本だけです。
正本と謄本は控えのようなもので、遺言者(遺言を残す人)に交付されます。
・原本:遺言者(遺言を作成した人)、公証人、証人の署名と押印がされたもの
・正本:原本の内容を記載したもので、原本と同じ効力がある。各種の相続手続きで使用できる
・謄本:原本の内容を記載したもので、効力はないが遺言の内容は確認できる
上記のうち原本はオリジナルのため再発行できませんが、正本・謄本は再発行できます。
正本・謄本が再発行できるのは、原本が公証役場で厳重に保管されているおかげです。
この仕組みによって、遺言書の紛失や偽造といったトラブルを防げるようになっています。
公正証書遺言の正本・謄本の保管場所は、法律の定めがありません。
一般的には自宅内に保管したり、信頼できる人や弁護士に預けたりする場合が多いようです。
先ほどもお伝えしたとおり、もし正本・謄本を紛失しても遺言者本人であれば再発行を申請することができます。
手続をすれば、代理人でも請求することが可能です。
ただし遺言者が生きているあいだは、推定相続人(法定相続人になる予定の人)などの利害関係者は再発行を申請できません。
もし遺言の内容が遺言者以外に知られると、相続を開始する前からトラブルに発展する可能性があるからです。
公正証書遺言の原本は、原則として20年間公証役場で保管されます。
ただし実質的には、遺言者が亡くなるまでは保存されると考えて良いでしょう。
なぜなら「保存の必要があるとき」は、20年を超えても原本が保管されることになっているからです。
たとえば作成から20年経っても遺言者が生きている可能性がある場合は、保存の必要があるため原本が保管され続けます。
実際に半永久的に原本を保存している公証役場や、遺言者が120歳になるまで保存している公証役場もあります。
参考: Q10.公正証書遺言は、どのくらいの期間、保管されるのですか。- 日本公証人連合会
公正証書遺言の原本は、無料で公証役場に保管されます。
何年保管しても料金を請求されることはありません。
ただし、公正証書遺言の作成には費用がかかります。
作成手数料や用紙代、必要書類の取得費用、場合によっては証人への報酬や弁護士への依頼費用などもかかります。
合計金額の目安は少なくとも5万円ほど、弁護士などへ依頼する場合は15万円以上は必要と考えておくと良いでしょう。
公正証書遺言の作成費用はいくら?役場・弁護士・証人など項目別に紹介
公正証書遺言を残した人が亡くなったとしても、相続人へ遺言書の存在を知らせる通知などは来ません。
なぜなら遺言者の死亡を公証人に伝えるようなシステムが存在しないからです。
そのため遺言者は、相続人が公正証書遺言の存在が分かるように手配しておく必要があります。
たとえば公正証書遺言を作成した事実や作成した公証役場を相続人へ伝えておく。他には、亡くなった場合に知らせてくれるように、信頼できる人や弁護士に依頼しておくなどの方法があります。
もし相続人に遺言書の存在が知らされなければ、遺言内容を実現できない可能性があります。
また、相続人が遺産分割を終えてから遺言書の存在が分かれば、トラブルに発展する可能性もあります。
公正証書遺言は原本が公証役場に保管されているので、遺言の存在さえ分かれば対応可能です。
たとえ正本・謄本が見つからなくても、遺言者が亡くなった後であれば相続人が再発行を申請できます。
最寄りの公証役場に行けば、公正証書遺言が作成されているかどうかを遺言検索システムで確認することも可能です。
公正証書遺言は、作成のための手間や費用がかかることも事実です。
そのため他の遺言形式でも役場に保管する方法はないかと考える方もいるでしょう。
実は保管制度を利用すれば、自筆証書遺言を法務局に保管できます。
現在は、自筆証書遺言(形式に則って自筆する遺言書)を法務局に保管できる制度があります。
この保管制度は「自筆証書遺言書保管制度」と言われ、令和2年7月から始まったものです。
この制度ができるまで、自筆証書遺言は自宅で保管したり、誰かに預けたりするしかありませんでした。
しかし、そういった保管方法では遺言書の紛失や改ざんなどのトラブルが起きる可能性があるため、この制度ができました。
自筆証書遺言書保管制度を利用する手間は、それほどかかりません。
事前に予約をしたうえで、自筆の遺言書に添えて保管申請書や住民票、本人確認書類などを管轄の法務局に持ち込むだけです。
制度を利用すれば、公正証書遺言と同じく検認(家庭裁判所で行う遺言書の開封手続き)が必要なくなるため、遺族の負担を減らせます。
また、公正証書遺言と違い、証人が不要なためハードルも低いといえます。
遺言書を見つけた場合の取り扱い方とは?正しい開封方法と検認手続きを解説
自筆証書遺言書保管制度の申請費用は3,900円です。
申請するときにだけ費用を支払えばよく、保管年数に応じて「保管料」が発生することもありません。
この制度を利用すれば、公正証書遺言を作成するよりもはるかに費用が安く済みます。
公正証書遺言の作成には数万円~数十万円かかりますが、自筆証書遺言は無料で作ることも可能です。
参考:02 遺言者の手続 – 自筆証書遺言保管制度(法務省)
自筆証書遺言書保管制度では、紙の原本にくわえて画像データが保管されます。
それぞれの保管期間は、原本が遺言者の死亡後50年間、画像データが遺言者の死亡後150年間です。
遺言者が亡くなった後は相続人が申請することで遺言書の内容を閲覧したり、手続きに利用できる証明書を発行したりできます。
また、法務局が遺言者の死亡を知ったときに相続人など(1名を指定可能)に通知してもらえるという、公正証書遺言にはないメリットもあります。
参考:法務局における遺言書の保管等に関する政令(令和元年政令第百七十八号)
料金も格安でメリットも多く感じる自筆証書遺言書保管制度ですが、「公証人による内容のチェックを受けられない」点には注意が必要です。
公正証書遺言は、公証人と呼ばれる法務のプロが遺言内容を確認したうえで作ってくれます。
しかし保管制度を申請するときに担当者がチェックするのは、署名や日付などの形式的な面のみです。
自筆証書遺言は自筆する必要があり、内容の不備や明確ではない点があれば遺言の効力を疑われかねません。
遺言の効力を重視したいなら、公正証書遺言の作成も検討するべきでしょう。
遺言書の作り方(書き方)のいろはを解説!2種類の遺言書別・ポイントや流れ
最後にもう一度、「公正証書遺言の保管」についておさらいしましょう。
・公正証書遺言の原本は、実質的に亡くなるまで公証役場に保管される
・正本・謄本の保管場所は自由で、再発行も可能
・公正証書遺言の保管料金は無料だが、作成には数万円以上の費用がかかる
・保管制度を利用すれば、自筆の遺言も法務局に保管できる
・自筆証書遺言の保管料金は、申請時にかかる3,900円のみ
・自筆証書遺言の保管期間は、原本が遺言者の死亡後50年間、画像データが遺言者の死亡後150年間
公正証書遺言の作成も自筆証書遺言書保管制度の利用も、「紛失や偽造の心配がない」「検認が不要」などのメリットは共通しています。
ぜひこのような保管制度を活用して、遺産相続のトラブルを防止しましょう。
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