生前整理の際に、遺言を残しておくべきか迷う方は多いのではないでしょうか。
私はプロとして生前整理のお手伝いをしていますが、遺言について次のような質問をよくいただきます。
「遺言を残しておく意味は?」
「どんな方法で遺言を残せばいい?」
「書き方や注意点は?」
上記からも分かるとおり、遺言についてくわしいことを知らない方がほとんどです。
そこで今回は「遺言を残しておくメリット」や「遺言書の種類・書き方・注意点」などについて紹介することにしました。
遺品整理業者として現場で培った知見もまじえながら解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも遺言とは、亡くなった後に備えて自分の意思を文章で残すことをいいます。
遺言の内容は自由ですが、「遺産相続」について書かれる場合がほとんどです。
というのは、自分の死後に財産をどのように処分してほしいのかを遺言として残しておくと、次のようなメリットがあるからです。
遺産を相続する人が二人以上いる場合、遺産の分け方を話し合い、意見を一致させる必要があります。
その際に意見が対立して話し合いがまとまらなかったり、家族同士の争いに発展したりするケースは想像以上に多いものです。
「うちの家族・親族は何も言わなくても平等に分け合ってくれるはず」と考える方もいるでしょうが、必ずしも皆が納得するとは限りません。
たとえば、「介護をしなかった人と平等に分け合うなんておかしい」「兄弟で唯一大学に行っていない私も同じ取り分なんておかしい」といった理由で平等な分配に納得されない場合もあります。
しかし法律に則った形で遺言書を作成しておけば、どの財産を誰にどの割合で相続させるかを決めておくことができ、無用な争いを防げます。
遺産相続の手続きを進めるためには、故人がどんな種類の財産をどれくらい所有していたのかを遺族が把握しておく必要があります。
もし故人が何も情報を残していない場合、その把握だけで手間や時間がかかり、困ることが多いものです。
しかし、ご本人が生前から遺言書や財産目録を作成しておけば、そういった遺産相続の負担を軽減できます。
故人が亡くなった後、相続人はさまざまな手続きで忙しくなり、悲しみに暮れる暇すらありません。
少しでも家族の負担を減らしたいなら、遺言を残しておくことをおすすめします。
故人の遺産は通常、法定相続人に引き継がれます。
法定相続人とは、遺産をもらうかどうかを判断できる立場の人のことです。
一般的には、故人の配偶者や子どもなどが法定相続人となる場合が多いでしょう。
もし配偶者や子どもがいない場合は、父母、兄弟姉妹などに遺産分割の権利が引き継がれます。
ただ、なかには法定相続人以外のお世話になった人や縁のあった人にも財産を遺したいと考える方もいるかもしれません。
たとえば内縁の妻・夫や認知していない子ども、身近で世話をしてくれた方などです。
これらの人たちに財産を譲りたいと考えた場合、法的に効力のある遺言書を残しておかなければ財産は分配されません。
もしこのような希望がある場合は、遺言書の作成を検討すべきといえるでしょう。
法定相続人とは?対象者や相続の優先順位と割合を遺品整理士が解説!
遺言を残しておく方法としては、遺言書を作成する方法が一般的です。
ただ、一口に遺言書といっても、次の3種類があります
・自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)
・公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
・秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)
遺言書に法的な効力を持たせるには、正しく作成し、決められた手続きを行う必要があります。
そのため作成する前に、それぞれの特徴や手続きについて把握しておくことが大切です。
「自筆証書遺言」の最大の特徴は、手軽に作成できることです。
公正証書遺の作成方法・手続きは、次のとおりです。
1.自ら手書きで遺言全文・日付・氏名を書き、押印する
2. 作成した遺言書を自宅で保管する(※2020年7月10日以降は、手続きを行えば法務局で保管してもらうことも可能)
自筆証書遺言は、紙とペン、印鑑の3つがあれば作成できます。また、自宅で保管する場合は特別な手続きが必要ないため費用もかかりません。
つまり手作りであっても記載すべきことがきちんと書かれてあれば、その内容に従わせることができるのです。
ただし自筆証書遺言には、それなりのデメリットもあります。
たとえば内容の一部をPCで作成したり、記載に漏れがあったりした場合など、不備があると法的な効力を失ってしまいます。
また、自宅で保管した場合、簡単に追記や書き換えができる一方で、紛失や改ざんのリスクもあります。
参考:民法第九百六十八条
「公正証書遺言」の特徴は、確実性が高く、法的な有効性を否定されるリスクが低いことです。
公正証書遺の作成方法・手続きは、次のとおりです。
1. 証人二人の立会いのもと公証役場に行く(有料だが、公証役場で証人を紹介してもらうことも可能)
2. 公証人に遺言内容を伝えて、法規に沿った形で遺言書を作成してもらう
3. 作成した遺言書を公証役場で保管してもらう
公証役場とは法務局の管轄する官公庁のことで、公証人は法務大臣が任命した準国家公務員です。
つまり公正証書遺言の場合、公証人という法務に長けた人が代筆するので内容に不備が生じる可能性が低く、有効性を疑われる可能性も低いのです。
また、公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるので、紛失や改ざんのリスクが低い点もメリットといえるでしょう。
その反面、手続きに手間がかかるうえ、数万円単位の高い手数料が発生する点はデメリットといえます。
ただ、安全性や確実性などを考えて、公正証書遺言を作成する人は多くいます。
弁護士などの専門家に相談した場合も、この公正証書遺言の作成を勧められるケースが多いでしょう。
遺言書の作り方(書き方)のいろはを解説!2種類の遺言書別・ポイントや流れ
「秘密証書遺言」の特徴は、遺言の内容を秘密にしておける点にあります。
秘密証書遺言の作成方法・手続きは、次のとおりです。
1. 自分で遺書を作成する(署名や押印だけ自分で行えば、PCでの作成や代筆も可能)
2. 作成した遺言書に封をして、2人の証人とともに公証役場に持ち込む
3. 作成した遺言書を持ち帰り、自宅で保管する
上記のとおり、自分で作成した秘密証書遺言を公証役場に持ち込むことで、遺言の存在を正式に認めてもらうことになります。
秘密証書遺言の内容は、同行する証人や公証人はもちろん家族など、誰にも明かさないでおけます。
そのため、遺言の内容を知られずに遺言の存在だけを証明することが可能です。
ただ近年は、秘密証書遺言を作成する人は減っています。
なぜなら、記載に不備があっても誰にも指摘してもらえないうえに、数万円単位の手数料がかかるからです。
つまり確実性が低い割に費用負担も大きいため、敬遠されているのが現実です。
遺産相続においてメリットの多い遺言書ですが、いくつか知っておくべき点や注意すべき点もあります。
法的な効力を発揮させるために、作成前にしっかりと確認しておきましょう。
遺言書には、基本的に何を書いてもかまいません。
しかし法的な効力を持たせられる内容は、厳格に決められています。
たとえば次のような内容であれば、法的な効力を持たせることが可能です。
・遺産相続に関して(遺産の分配方法、受け取り人など)
・身分に関して(子どもの認知、未成年者の後見人の指定など)
・遺言の執行に関して(遺言を執行する人の指定など)
・祭祀主催者について(お墓や仏壇などの承継者の指定など)
もし、法的な効力を持たせられない些細なことを伝えたい場合は、「エンディングノート」などを使うのも手です。
エンディングノートに法的な効力はありませんが、自分の思いや考えなども自由に書くことができます。
エンディングノートとは?書き方・メリット・注意点などについて解説!
判断力が低下している状態で作成した遺言書は、法的な有効性が問われる場合もあります。
歳を重ねるごとに、認知症やその他の病気などを患う可能性は上がっていくものです。
そのため、遺言書は心身ともに健康であるうちに作成することをおすすめします。
遺言書の種類によって手続きの手間はかかるものの、後から内容の変更や書き直しをすることも可能です。
早過ぎるなどという理由で先送りして、遺言書作成のタイミングを逃さないようにしましょう。
参考:民法第九百六十三条
せっかく遺言書を残しても、内容が不明瞭だと効力が生じない場合もあります。
そのため遺言書を作成するときは、内容が明確に伝わる文章を意識しましょう。
遺産に関しては、「誰に」「何を」「どう相続させるのか」が明確に伝わる文章を。
人物を指定するならフルネームで名前を記し、生年月日や住所まで書いておくと確実です。
誤字・脱字があると効力を失う可能性もあるので、しっかりと確認しておきましょう。
遺品整理の現場に携わっていると、遺書の内容が原因で揉めるケースをよく目にします。
そういった無用な争いを避けるには、遺言の結論にいたった理由まで記しておくことが大切です。
たとえば特定の子どもだけに財産を継がせる場合、その理由や想いを書いておくことで、遺産の分配を受けられなかった他の子どもたちの不満が和らぎます。
ご自身亡き後に家族が平和に暮らすためにも、各人が納得できる理由を用意しておきましょう。
最後にもう一度、「生前整理と遺言」についておさらいしましょう。
・遺言書を残しておくと、遺族相続のトラブルを避けられたり、手続きの負担を軽くできたりする
・相続人以外の人に財産を遺したい場合も遺言書が必要
・遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・公正証書遺言の3種類がある
・遺言書に法的な効力を持たせるには、遺言書の種類に応じて決まった方式で作成する必要がある
・遺言書は元気なうちに作成し、家族の心情も考えた内容にすることが大切
そのメリットから、遺言書を残す人の数は年々増加しています。
もし遺産相続に関して伝えたいことがある場合は、ぜひ作成を検討してみてください。
生前整理では、遺言を残す以外にもやるべきことが多くあります。
そのなかでも大変なのが、家の中の整理ではないでしょうか。
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