終活において財産の整理は重要です。
なかでも銀行口座の生前整理は、優先的に取り組んでおきたいことの一つと言えるでしょう。
とはいえ銀行口座の整理について、次のような疑問がある方も多いのではないでしょうか。
「なぜ銀行口座を整理するべきなの?」
「具体的に何をすればいい?」
「銀行口座を整理するときに気をつけるべきことは?」
今回は銀行口座の生前整理ついて、「メリット」や「方法・手順」「注意点」などを紹介します。
私はプロとして生前整理のお手伝いをしている者です。現場でつちかった知見も活かして解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
冒頭でもお伝えしたとおり、銀行口座の生前整理は優先的に取り組んでおくべきと言えます。
その理由は、口座数を減らすなどして整理すれば次のようなメリットを得られるからです。
生前から銀行口座を整理しておけば、ご自身が亡くなった後の家族の負担を減らせます。
銀行は、名義人の死亡を知った時点で口座を凍結するのが一般的です。
その場合、引き出しはもちろん預け入れや振り込みなどもできなくなります。
口座の凍結を解除したい場合は、遺族が相続手続きをするしかありません。
銀行口座の相続手続きをするには、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書、遺産分割協議書などさまざまな必要書類を揃える必要があります。
また、銀行によっては直接窓口に出向いて手続きしなければいけません。
このような手続きを口座を持っている銀行ごとに行う必要があるため、遺族の負担は重くなりがちです。
残された家族は、各種手続きの他にも挨拶回りや遺品整理などやることがたくさんあります。
不要な口座は解約しておき、少しでも負担を減らしてあげることをおすすめします。
遺品整理で故人の銀行口座手続きの流れを解説!凍結から解約、相続まで
亡くなった後に、本人が把握していない銀行口座が見つかることはよくあります。
見つかった口座の預金額が多い場合、配分をめぐって相続人どうしで揉めるなどのトラブルも起こりかねません。
たとえ揉めなくても、相続税の課税額が増えてしまう可能性もあります。
また、口座が見つかる前に相続放棄を選択していた場合は、さらに事態がややこしくなります。
すでに相続放棄を終えていた場合、遺族が預金を放棄しなければならない可能性があるからです。
しかし生前から所有口座の数や残高を把握しておけば、このようなトラブルを防げるほか、家族が口座を把握する手間も省けます。
遺品整理で借金を発見!相続放棄の方法や注意点は?整理後に気づいた場合は?
銀行口座の生前整理は、ご自身のためにもなります。
持っている口座数が多いと、残高や引き落とし額などが把握しにくいものです。
しかし口座数を絞り、用途別に口座を使い分ければ、お金の流れが管理しやすくなります。
各口座の残高を合計すると意外に高額になるケースも多いため、余剰資金を資産運用や趣味などにまわすこともできるかもしれません。
限りある老後資産を有効活用するという点でも、銀行口座の整理はおすすめできます。
10年以上使っていない口座は、基本的に休眠口座として扱われます。
休眠口座の預金は預金保険機構と呼ばれる組織に移されたあと、民間公益活動に活用されることが「休眠預金等活用法(2018年施行)」という法律により定められています。
誤解が多いのですが、休眠口座となった後でも預金が無くなるわけではありません。
ただし休眠口座となった後に預金を引き出すには手続きが必要で、手間や時間がかかります。
いざという時に必要な資金が引き出せない状態にならないよう、使っていない口座は解約して他の口座に預金を移すなどしておきましょう。
参考:平成二十八年法律第百一号 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律
使わない銀行口座を解約して整理することは、無駄な出費を抑えることにもつながります。
なぜなら近年、メガバンクを含めて多くの銀行で口座維持手数料の導入が進んでいるからです。
口座維持手数料とは、口座を管理・維持するための手数料のことです。
すべての口座に手数料が課されるわけではないものの、一定期間取引がなく、残高が少ない口座からは年間1,320円(税込み)の手数料が引き落とされます。
本来は払わなくてもよい手数料を節約するためにも、使わない口座は解約することをおすすめします。
銀行口座を生前整理するために何をすれば良いのか分からない、という方も多いのではないでしょうか。
口座の整理はそれほど難しくはありません。具体的な手順は、次のとおりです。
銀行口座を生前整理するうえで最初にやることは、持っている口座を把握することです。
そのために、全ての口座のキャッシュカードや通帳を集めて一覧表を作ります。
このとき、通帳のないネット銀行は忘れがちなので注意が必要です。
口座を開設したのか分からない場合は、銀行に問い合わせてみたり、過去の郵便物・メールを確認してみたりしましょう。
一覧表には、口座ごとに次のような情報を記しておきます。
・銀行名
・支店名
・預金の種類
・口座番号
・残高
・用途(年金の受け取り、クレジットカード引き落としなど)
作成した一覧表の保管場所を家族に伝えておくと、万が一の際に家族が情報を確認できるため安心です。
なお、これらの情報はエンディングノートに記載しておくことも可能です。
最近では、金融機関の情報を書く欄があるエンディングノートも市販されています。
エンディングノートとは?書き方・メリット・注意点などについて解説!
口座の一覧表を作成できたら、次は解約する口座を選びます。
解約するかどうか迷ったときは、次のような基準で判断すると良いでしょう。
・数年間使用していない口座は解約する
・残高が少なく使用頻度も低い口座は解約する
・近所にATMがあるなど、使いやすい口座を残す
・利率が良かったり、サービスが手厚かったりする銀行の口座を残す
このように解約する口座と残す口座を振り分け、用途ごとに多くても1~2つの口座を残すようにします。
複数の口座で引き落としが行われている場合は、同じ引き落とし用の口座にまとめられないか検討しましょう。
解約する口座が決まったら、次は解約手続きを行います。
銀行口座の解約は、窓口で解約したい旨を伝えれば手続きすることが可能です。
銀行によっては、郵送またはインターネットで解約手続きができる場合もあります。
もし何らかの理由で口座が凍結されてしまっている場合は、解約する前に窓口で相談しておくとスムーズです。
解約時に必要な書類は、次が一般的です。
・通帳、キャッシュカード
・届出印
・本人確認書類(運転免許証など)
・解約の申込用紙(各銀行で用意されている)
ただし銀行によって解約方法や必要書類が異なるケースもあります。事前にホームページを見たり、問い合わせたりして確認しておきましょう。
なお、残高がゼロになっても口座は解約されないため、解約手続きは必ず行うことをおすすめします。
不要な口座がたくさん残っていると、遺族が一つずつ確認する手間が発生してしまうからです。
銀行口座の生前整理には多くのメリットがあるとはいえ、注意すべき点もあります。
口座を整理するときは、次のような点に気をつけましょう。
銀行口座の解約手続きを進める前に、記帳などをして「何に使っているか」を確認しておくことが大切です。
もし確認せずに引き落とし口座を解約した場合、サービスが停止されてしまったり、請求書払いになってしまったりなどの不便が発生する場合もあります。
また、定期預金が残っている場合は、満期よりも前に解約することで利率が下がるケースもあるでしょう。
近年は、昔よりも口座開設の条件が厳しくなっています。解約したあとに再び口座を開設しようと思っても難しいこともあるのです。
勢いだけで解約せずに、整理する口座は慎重に選んでおくと安心です。
銀行口座を少なくするほど管理は楽になりますが、最低でも2~3口座は残すことをおすすめします。
なぜなら、口座を一つだけにまとめるとリスクを分散できないからです。
一つしかない口座のキャッシュカードを紛失した場合、再発行されるまでの間は現金を引き出せません。
また、将来的に認知症になった場合、口座が凍結されるリスクもあります。
自ら申し出なくても、窓口に出向いた本人が認知症だと疑われる行動を取れば、銀行側が勝手に口座を凍結するケースもあります。
そのような場合でも口座が複数あれば、別の口座から預金を引き出せる可能性があります。
また、万が一銀行が破綻したときのリスクを考えても、口座は複数あるほうが安心です。
金融機関が破綻した場合、預金は1千万円までしか保護されません。預金残高が多い場合は、複数の口座に分散しておきましょう。
最後にもう一度、「銀行口座の生前整理」についておさらいしましょう。
・銀行口座を生前整理しておくと、家族の負担軽減や相続トラブルの防止につながる
・銀行口座を生前整理しておくと、休眠口座になったり口座維持手数料が発生したりすることを防げる
・銀行口座を生前整理するときは、一覧表を作ったうえで解約する口座を選ぶと失敗が少ない
・銀行口座を解約する前に、使用状況をしっかりと確認しておく
・キャッシュカードの紛失や口座凍結などのリスクを考え、口座は2~3つ残しておくと安心
生前から銀行口座を整理しておくと、残される家族の負担を減らすことができます。
ご自身もお金の管理がしやすくなり、老後資金も有効活用できるでしょう。
銀行口座は元気なうちから整理しておくことをおすすめします。
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