財産を贈りたい相手がいるけれど、「遺贈と生前贈与どっちがいいんだろう?」と悩んでいませんか?
遺贈と生前贈与のどちらも財産を贈る手段ではありますが、違う部分も多いそうです。
私の所属するクリーンケアのお客さまの中にも生前整理中、2つの違いが分からなくて「遺贈と生前贈与、どっちを選べばいいんだろう」と困っている方もいらっしゃいました。
そこでこの記事では、一般的に言われている知識として遺贈と生前贈与の違いについてご紹介。
合わせてメリットやデメリットも紹介します。
「どちらにしようか」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
遺贈と生前贈与の違いは、大きく分けると5つあるそうです。
1.相手の合意が必要か
2.手続きの方法
3.撤回が自由にできるか
4.財産が渡されるタイミング
5.発生する税金の違い
それぞれ順番に見ていきましょう。
遺贈と贈与の違いの1つ目は、「相手の合意が必要かどうか」というところです。
◆遺贈:相手の合意は不要
◆贈与:相手の合意が必要
遺贈は、遺言者の一方的な意思表示(単独行為)とされています。
そのため、遺言書が有効であれば、相手の合意がなくても遺贈はできると言われています。
もし、受取人となる相手が財産を遺贈されることを知らなかったとしても、遺贈は成立するのだそうです。
一方、生前贈与は「契約」になるため、相手が贈与について合意しないと成立しないとのこと。
贈与者が「〇〇に財産を渡す」という意思表示をして、受取人が「合意する」という意思表示をすることで、生前贈与が成立するそうです。
遺贈と生前贈与の違いの2つ目は、手続きの方法です。
◆遺贈:遺言書の作成が必須
◆生前贈与:口約束も可
遺贈は、遺言書を作成しないと成立しません。
つまり「私が死んだら、財産を譲るよ」という口約束や、手紙に書いても遺贈はできないのだそうです。
また、遺言書を作成しても有効と判断されなかったら、遺贈も無効になってしまいます。
一方で、生前贈与は様式に決まりはなく、お互いの口約束でも成立は可能なのだそうです。
ただし「言った」「言ってない」などのトラブルが起こる可能性があるので、何らかの書面は残していた方が良いと言われています。
遺贈の手続きと生前贈与の手続きについては、それぞれ以下の記事で、より詳しく説明しています。
気になる方はぜひご覧になってください。
【生前整理】遺贈を実現する手続きとは?遺贈の種類や注意点、困ったときの相談先も紹介
生前贈与とは?相続とどっち?非課税・一般的なやり方・注意点も解説
遺贈と生前贈与の違いの3つ目は、成立した後に「やっぱり一度考え直そう」と撤回が自由にできるかどうかです。
◆遺贈:撤回は自由
◆生前贈与
・口約束:契約がまだ履行していない場合、撤回は自由にできる
・書面:撤回をするには、当事者の合意が必要
まず遺贈は、いつでも撤回することができると言われています。
遺贈は、遺言者の一方的な単独行為なので、受取人の許可もいらないからです。
また、遺言書自体、何度も書き直すことができます。
修正回数の制限もありません。
よって、遺贈の撤回は自由にできるのだそうです。
ただし受取人からしたら、いつでも撤回される可能性があるということになります。
一方で、生前贈与は口約束か書面かで違いがあるそうです。
口約束による生前贈与は、契約の履行前なら撤回も自由にできるのですが、履行した後は自由にできなくなります。
受取人としては、書面を作成しておく方が安心と言えるでしょう。
遺贈と生前贈与の違いの4つ目は、財産が渡されるタイミングです。
◆遺贈:死亡日(もしくは死亡日以降)
◆生前贈与:生前中なら、いつでも自由
まず遺贈は、基本的に「遺言者が亡くなってから」効力が生まれます。
「遺言書」が効力を発生するのは、遺言書が亡くなってからとされているからだそうです。
遺贈は、遺言書に記載されることなので、遺言者が生きている間は効力を発生することができません。
そのため、もし受取人が遺言者よりも先に亡くなってしまった場合、遺贈の効力も発生しなくなります。
一方で、生前贈与では、贈与する日は当事者が自由に決めることができるようです。
遺贈と生前贈与の違いの5つ目は、発生する税金の種類です。
遺贈と生前贈与では、それぞれ次の税金が発生します。
◆遺贈:相続税
◆生前贈与:贈与税
遺贈によって財産を受け取った場合、その財産は相続税の対象になります。
実際に財産が相手に渡されるのは、遺言者の死後になるためです。
受取人が法定相続人以外の第三者であっても、相続税になるそうです。
相続税が発生するのは、受け取った財産の総額が基礎控除より高額だったときです。
◆相続税の基礎控除
3000万円+600万円×法定相続人数
※遺贈の相手が法定相続人以外の場合、計算人数にはプラスしない
相続税についてはこちらの記事でも紹介しているので、ぜひ参考になさってください。
【簡単に分かる】遺品整理での相続税を6つのポイントで徹底解説!
一方で、生前贈与では贈与税が発生します。
贈与税の基礎控除は年間110万円しかなく、税率も相続税に比べると高額になります。
実際に財産を渡す前に、税金がいくらになるのか一度計算してみることをおすすめします。
ここまで、遺贈と生前贈与の違いについて紹介してきました。
「違いは分かったけど、どっちを選べばいいんだろう…」と決めきれないかもしれませんね。
そこでここからは、遺贈と生前贈与のメリットとデメリットをご紹介していきます。
遺贈のメリットは、全部で2つです。
①遺言書を作るので、相続人同士のトラブルを防ぎやすい
②法定相続人が不動産を遺贈された場合:登録免許税が安くなる
遺言書がない場合、相続人の全員で遺産分割協議を行うのが一般的と言われています。
「財産をどのように分配するか」完全に決めきるには時間もかかりますし、相続人たちの揉めごとも起きやすいそうです。
遺贈をするには、遺言書を作成するのが不可欠。
そのため、相続人たちのストレスも軽減できます。
さらに法定相続人に限りますが、遺贈で不動産を譲り受けた場合、登録免許税が0.4%になるそうです。
生前贈与の場合や、法定相続人以外に遺贈する場合は2%かかるので、かなり安いと言えるでしょう。
遺贈のデメリットは、手間と費用がかかることです。
遺言書を作成するには、準備として財産の整理をしなくてはいけません。
また、遺贈の種類によって、遺言書での形式も変わってきます。
ご自身で作成する(自筆証書遺言)場合は、正しい書き方になるよう注意しないと無効になってしまうことも。
手間がかかる上に、間違いのないように完成させるのはかなり大変です。
そこで、手間をかけず、間違いのない遺言書を作りたいのであれば、行政書士や弁護士など専門家に「公正証書遺言」の作成を依頼することになります。
費用がかかってしまいますが、確実に遺贈を実現するには公正証書遺言を作成することを個人的におすすめします。
続いて、生前贈与のメリットは次の2つです。
①好きなタイミングで相手に財産を渡せる
②課税システムを活用しやすく、節税効果も得やすい
生前贈与では、お互いのタイミングに合わせて、その都度、財産を贈与することができます。
遺贈では、ご自身の死後にまとめて財産を渡すことになりますが、生前贈与は状況に応じて、相手が受け取りたいタイミングで受け取ることも可能だそうです。
また、贈与税には特例措置も多いのもメリットの一つ。
例えば、祖父母や父母から20歳以上の子ども、孫へ財産を贈与する場合、通常の贈与税よりも低い税率が設定されています。
他にも、以下のような特例措置があるので、うまく利用すれば、節税効果も得やすくなりるでしょう。
・住宅取得等資金の贈与税の非課税制度
・教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度
・結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度
ただし、2021年4月の税制改正より、それぞれの制度にも変更が生まれたようです。
もし、節税を目的として生前贈与を考えているという方は、一度お近くの税理士へ相談してみてください。
生前贈与のデメリットとしては、税金の高さが挙げられます。
先ほどいくつか特例措置があることを紹介しましたが、条件を満たさなければ制度は利用できません。
贈与税の税率は20%で、相続税よりも税率が高いです。
また、不動産を贈与する場合、登録免許税は2%。遺贈の0.4%よりも高くなってしまいます。
その分、受取人が支払う金額が高くなる可能性もあります。
「税金が高くなりすぎて、受取人の手元には思ったよりも残らなかった」というケースも少なくないようです。
遺贈と生前贈与のメリット、デメリットを紹介してきました。
どちらがいいかは、相手やあなた自身の状況や、気持ち次第になるところも大きいです。
もし「どちらがいいのか選べない」という場合は、弁護士や行政書士に相談してみてください。
ご自身で調べてみるのも大切ですが、専門的な部分は自力では難しい部分もあります。
曖昧に進めて後悔するよりも、時間がかかっても納得する道を選んでいくことをおすすめします。
遺贈と生前贈与の違いや、それぞれのメリットとデメリットについて紹介してきました。
遺贈と生前贈与は、どちらも財産を譲る手段ではありますが、少しずつ違いがあります。
メリットとデメリット、そして相手の状況やあなた自身の気持ちを考慮して、全員が納得する道を選ぶようにしましょう。
専門的な部分に不安があるときは、弁護士や行政書士に相談してくださいね。
もし遺贈や生前贈与の前に「財産になるものを整理したい」という方は、ぜひ私たち生前整理業者のクリーンケアに相談してください。
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