「体力の衰えや家族のことを考えて、遺言書の作成を考え出した」
「初心者向けに遺言書の『いろは』、ポイントや注意点などを知りたい」
「自分で遺言書を作ってみようと考えているが、遺言書ってどんなのがいいんだろう?」
など、遺言書について気になることはありませんか?
遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類あり、「手書き」「法的拘束力が強い」といった特徴があります。
私は普段、遺品整理業者として働いているのですが、相続のご相談で遺言書についても聞かれることがあります。
そこで今回は「遺品整理の作り方(書き方)」「遺言書の種類」「ポイントや流れ」をお伝えしていきましょう。
目次
冒頭でもお伝えしたように、遺言書の作り方(書き方)で知っておきたいのが、遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類あることです。
他にも秘密証書遺言と呼ばれるものもありますが、基本的に自筆証書遺言と公正証書遺言を知っておけばいいでしょう。
自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴を簡単にまとめました。
1.「自筆証書遺言」は手書きで作成する遺言書
2.「公正証書遺言」は公証人が作成する遺言書
結論からいうと、法的拘束力を持たせてきちんとした遺言書を作りたいなら、公正証書遺言がおすすめです。
ではそれぞれの特徴、メリットデメリットをお伝えしていきましょう。
1つ目の「自筆証書遺言」とは、手書きで作成する遺言書です。
自筆というだけあり、一文字でも他人が代筆してはなりません。
もし代筆だと分かるとその遺言書は無効になるため、くれぐれも注意しましょう。
メリット「簡単に追記や書き換えができる」など
自筆証書遺言のメリットとはずばり、簡単に追記や書き換えができることでしょう。
簡単に追記や書き換えができるメリットでは、さらにこういったことがいえます。
・資産の変化や追記があれば簡単に書き換えられる
・費用がかからない
・作成者の肉筆であるため、説得力がある
・用紙や縦書き、横書きといった決まりがない
書き方の例は後ほどお伝えしますが、手書きとはいえ、記載すべきことが書かれてあれば、遺言書として認められます。
さらに用紙の指定もなく、チラシやメモ用紙の裏に書いてもかまいません。
「手書きの手軽さを生かしたい」方に向いているといえるでしょう。
デメリット「法務局に預けていないと、家庭裁判所で検認手続きが必要」など
自筆証書遺言のデメリットは、「法務局に預けていないと、家庭裁判所での検認手続きが必要」です。
自筆証書遺言には「開封時に家庭裁判所にて、検認手続きが必要」という決まりを聞いたことありませんか?
なぜなら自筆証書遺言は、紛失しやすく改ざんされる可能性が高いためです。
そこで2020年7月からは、自筆証書遺言を法務局で保管できるようになり、家庭裁判所への検認手続きも不要になりました。
しかし法務局に預けておらず、家庭裁判所の検認を依頼する場合、以下のようなことがあります。
・依頼から業務が完了するまでに1~2カ月かかる
・検認前に遺言書の封筒を開くと、5万円以下の過料の発生
・決まりを満たしていないと、無効になる可能性がある
・認知症など判断能力がなくなっているときに作ると、無効と見なされる
自筆証書遺言は手書きで書くため、どうしても作成者の管理能力に委ねられます。
残される遺族のためにも、自筆証書遺言の保管場所には注意しましょう。
2つ目の「公正証書遺言」とは、公証人が作成する遺言書です。
公正証書遺言は公証役場の公証人が作り、公正証書として公証役場に保管してもらいます。
なお公証役場とはいわゆる市役所とは違い、法務局の管轄する官公庁のことで、公証人が執務をおこなう役場。
ぜひ住まいの地域と公証役場で検索してみるといいでしょう。
メリット「法的拘束力が強い」など
公正証書遺言のメリットとは、前述でもお伝えしていますが「法的拘束力が強い」点です。
法的拘束力が強い点に関して、他のメリットもまとめました。
・無効になる心配がほぼない
・公証役場で管理されるため、紛失や改ざんの恐れがない
・家庭裁判所での検認手続きが不要
自分1人ではなく、第三者によって作成、保管、管理される公正証書遺言。
「家族に分かるよう確実に伝えたい」「財産によるもめ事を減らしておきたい」方ほど、公正証書遺言をおすすめします。
デメリット「費用がかかる」など
公正証書遺言にも「費用がかかる」「証人が2人以上必要」などのデメリットがあります。
財産の価額ごとに、公正証書遺言の作成手数料をまとめました。
・100万円まで:5,000円
・100万円超~200万円まで:7,000円
・200万円超~500万円まで:1万1,000円
・500万円超~1,000万円まで:1万7,000円
・1,000万円超~3,000万円まで:2万3,000円
・3,000万円超~5,000万円まで:2万9,000円
・5,000万円超~1億円まで:4万3,000円
・1億円超~3億円まで:4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円加算
・3億円超~10億円まで:9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円加算
・10億円超:24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算
参照・参考:日本公証人連合会:日本公証人連合会 1 遺言
作成手数料は財産を相続する人ごとにかかりますし、上記以外にも遺言加算や枚数加算、謄本交付手数料も発生します。
「法的拘束力を持つことは、それなりにお金や人がかかる」と、知っておくといいでしょう。
ここまで自筆証書遺言と公正証書遺言についてお伝えしてきました。
実際に自分で遺言書を作る場合、どんなポイントや流れがあるのでしょうか?
遺言書には、おおまかに分けて法的効力のある「法定遺言事項」と、法的効力を持たない「付言事項」を書きます。
「法定遺言事項」とは、法的効力が認められる事項のことで、「遺言によってできること」を指します。
つまり遺言書には、「法定遺言事項以外の内容を書いても認められない」のだと、知っておくといいでしょう。
法定遺言事項にはどんなことを書くのか、まとめました。
・推定相続人の廃除、および廃除の取り消し
・相続分の指定
・遺産分割の方法の指定・遺産分割の禁止
・特別受益の持ち戻し免除
・共同相続人間の担保責任の指定(減免と加重)
・遺贈の減殺方法の指定
・包括遺贈および特定遺贈
・子どもの認知
・未成年後現任と未成年後見監督人の指定
・遺言執行者の指定と委託
・信託
・祭祀(さいし)に関する権利の承継
・保険金受取人の指定と変更
対して「付言事項」とは、家族への感謝や葬儀の方法、遺品整理のことなど、法的拘束力を持たない内容のことです。
付言事項に法的拘束力はないものの、遺品整理の内容など伝えておくだけでも、相続人の負担が減るでしょう。
遺言書には、一緒に財産目録も付けることも大事です。
財産目録とは保有している財産(資産と債務)の一覧表で、「誰にどの財産を相続させるのか」決めることができ、無駄な相続トラブルを防げます。
順番としては、どんな財産があるのか確認後、「誰にどの財産を相続させるのか」と、遺言書を作りましょう。
ところで財産目録には、以前まで手書きの指定がありましたが、現在はパソコンでの作成が認められています。
財産目録は遺言執行者(財産の引き渡しをおこなう者)でない限り、誰が作ってもかまいませんが、不安なら税理士などに依頼するといいでしょう。
財産目録については、ぜひこちらの記事を参考になさってください。
財産目録とは相続トラブルを防ぐために必要!自分で作る場合や疑問も解説
自筆証書遺言を書く場合、押さえるべきポイントは以下の3つです。
1.遺言者(作成者)の署名がある
2.捺印(なついん)がある(できれば実印が望ましい)
3.作成した日の日付が自筆で書かれてある(日付印は不可、必ず自筆で日付を書く)
守っていないと、せっかくの遺言書が無効になるため、くれぐれも気を付けましょう。
なお遺言書は、何通か見つかった場合、もっとも日付の新しいものが使われます。
日付の記載も忘れずおこないましょう。
自筆証書遺言の書き方は、ぜひこちらの法務省の様式にのっとって書くことをおすすめします。
参照・参考:(リンクPDF)法務省:法務省 自筆証書遺言書の様式について 遺言書の様式の注意事項
自筆証書遺言書の用紙(A4サイズ)はこちらがあります。
参照・参考:(リンクPDF)法務省:法務省 自筆証書遺言書の様式 遺言書の様式例
公正証書遺言を作る場合、最寄りの公証役場に問い合わせましょう。
公正証書遺言作成までの流れ、方法をまとめました。
1.遺言書の内容、原案を作る(財産を整理する)
2.証人を2人用意する(公証役場で証人の紹介も可能)
3.必要書類をそろえる
4.公証役場にて遺言書作成の予約をする
5.公証役場で公正証書遺言を作る(証人2人とともに出向く)
作成の際に必要な書類はこちらです。
・遺言者の戸籍謄本(相続人との続柄が分かるもの)
・遺言者の免許証や印鑑登録証明書などの、本人確認資料
・相続人以外が財産を受け取る場合、その人の住民票
・登記事項証明書と固定資産評価証明書(不動産がある場合)
・証人2人の手配
公正証書遺言の作成例は、こちらの法務省の作成例が参考になります(2ページ目に公正証書遺言あり)。
参照・参考:(リンクPDF)法務省:法務省 自筆証書遺言及び公正証書遺言の作成例
ここまで遺言書の種類や書き方をお伝えしてきましたが、遺言書のメリットは何といっても相続のもめ事を減らすことでしょう。
人が亡くなると、通常であれば法定相続に従い、法律で認められた相続順位と法定相続分に従う形になります。
しかし実際は家族間での違いがあり、法律や数字では割り切れない部分が出てきます。
そこで遺言書がないことには「誰が親の預貯金口座を引き継ぐか?」などを決めるために、遺産分割協議書を作らねばなりません。
このような事態を少しでも減らすためにも、財産の受け取り指定などで遺言書を作っておくといいでしょう。
遺言書にはメリットもありますが、「受取人を遺言書に書いていたが、指定の相手が保険金を受け取れなかった」ケースもあります。
このケースは、保険契約書には前妻、遺言書には現在の妻と、保険金の受取人が逆になっていました。
しかし契約書の内容を変える前に、契約者である夫が病気になり、病院の集中治療室に入ったまま亡くなってしまったのでした。
結果、契約書の受取人変更の申し出ができずじまいになります。
この場合、保険会社の契約書は前妻の指定だったため、前妻が保険金を受け取ることになったのでした。
保険会社としては「契約書に書かれてあった内容を守った」ということです。
確かに遺言書の法定遺言事項には「保険金受取人の指定と変更」もありました。
この場合、現在の妻が不服と思うならば、前妻と現在の妻の間にて法律上で争うことになります。
遺言書に書いているとはいえ、保険金などは特に遺言者の意思表示がはっきりできるときに決めておきましょう。
遺言書についてお伝えしてきました。
最後に、お伝えしてきた内容をまとめましょう。
・遺言書は主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がある
・遺言書には、法的効力のある「法定遺言事項」と法的効力を持たない「付言事項」を書く
・自筆証書遺言の場合、「遺言者(作成者)の署名があること」などのポイントがある
・公正証書遺言の場合、まずは公証役場に問い合わせる
・遺言書のメリットは「相続のもめ事を減らす」
遺言書は決まりやポイントを押さえて作りましょう。
ところで、私の所属する『クリーンケア』では、遺品整理を中心に、相続に関するご相談も受け付けています。
クリーンケアは大阪に限らず、奈良、兵庫、京都、和歌山、滋賀と関西エリアを中心に幅広く対応中です。
相続に関することや遺品整理に関することなど、クリーンケアにぜひお知らせください!