「相続税がどんな遺品に課税されて、いくら課税されるのか気になる」
「相続税のトラブルが起きないようにしたい」
「相続税の節税方法や債務控除について知りたい」
遺産を相続するときに気になるのが相続税。
せっかく残してもらった相続財産の税金であまり悩みたくはない。とは言え、もらえるならできるだけ多く相続財産をもらいたいから節税を考えるのが本音ですよね。
でも税金は難しくてよく分からなかったり、トラブルにならないようにどうしたらいいのかを悩む方は多くいます。
そこで今回は、普段から遺品整理の現場に携わる私が、【相続税とはなにか】を解説していきながら下記のことをお伝えしていきます。
・相続税のトラブルにならないために注意すべきこと
・相続税の対象になるもの
・相続税の計算方法
・生前・死後に使える相続税の節税方法
この記事を最後まで読む頃には、相続税の悩みは解消されて安心して遺品整理をおこなえますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
相続税とは、故人の財産を相続したときに課税される税金です。
財産は、現金だけでなく故人が所有していた土地や建物もあれば、骨董品や有価証券なども含まれます。
相続税が課税されるものはこれら全ての相続財産の合計金額なので、遺品整理と財産分割を終わらせないと計算できません。
また、故人が残した借金や債務も財産に含まれることも覚えておくと相続する際に借金を背負うリスクを減らせます。
相続税の納税の際は申告書も提出する必要があり、故人が亡くなったことを知った翌日から10ヶ月以内の規定があるので覚えておきましょう。
遺品整理において、お金のトラブルは遺品整理の現場でもよく見かけます。そのなかでも、相続に関するトラブルがもっとも多いです。
遺言書やエンディングノートが残されてないと、親族や相続人とお金のトラブルになると泥沼化して何年も解決できなかった事例もあるため心身共に疲弊しかねません。
そこで、遺言書が残されていない場合、どのようなことがトラブルに発展するのかを具体例と対策方法も踏まえながら解説していきます。
相続トラブルの多くは相続財産を均等に分けることができない場合や、誰がより多く財産を相続するかの主張で起こる事例が多いです。
下記によくある4つの事例と解決策を解説していますので、あなたの回りでも相続トラブルが起こらないように参考にしてみてください。
事例1:相続するものが1つの不動産しかない場合
相続税のよくあるトラブルとして不動産は特に多い事例です。なかでも故人が不動産をひとつしか所有していない状況だと相続トラブルが起こりやすくなります。
不動産をひとつしか所有しておらず、複数人が相続を主張した場合の解決策としてもっとも有効なのが換価分割です。
不動産を売却し、費用を差し引いた残りの売却金を現金で等分する方法です。
例えば、評価額5,000万円の不動産を4人で分割する場合、不動産売却後に費用1,000万円を差し引いた4,000万円を4人の法定相続人で等分します。
事例2:財産の独占を主張してくる場合
相続トラブルのなかには、以下のような遺産相続のタイミングで急に現れて遺産相続の独占を主張してくるケースもあります。
・故人の息子だから
・故人と同居してたから
・故人の介護をしていたから
上記のような主張で相続財産が多く分配されるような法律はありませんので、すべての法定相続人に分配しなければいけません。
相続税は法定相続人の人数分で控除金額も変わってくるので、独占主張があまりにも強ければ弁護士や税理士に相談しましょう。
事例3:前妻と後妻にそれぞれ子供がいる場合
故人に離婚歴がある場合も、相続トラブルの引き金になりやすいです。
法律上、故人の配偶者が法定相続人となるので後妻の子どもと先妻の子どもは相続人として扱われます。
また、先妻の子どもは、後妻が相続する財産の2分の1の残りを法定相続人の人数で等分した金額が相続されます。
例えば、今回のケースだと故人の財産が1,000万円の場合、後妻は2分の1である500万円を相続します。残りの500万円は、先妻の子どもと後妻の子どもで等分した250万円ずつが相続されます。
事例4:遺言書に特定の人物に財産をすべて譲渡すると書かれていた場合
遺言書は公書のため、遺品整理や相続は遺言書に沿っておこなわなければいけません。
しかし本来、以下のような近親者であれば「遺留分」として相続財産が配分される権利を持っています。
・故人の配偶者
・父母、祖父母、曾祖父母
・子ども
遺留分とは、近親者であれば民法で決められた一定額の相続財産を必ず取得できる分を言います。
遺留分としていくら相続金をもらえるのかは以下の表から計算して決定します。
※表1
法定相続人 |
法定相続人の遺留分 |
|||
配偶者 |
子ども |
父母 |
兄弟 |
|
配偶者のみ |
1/2 |
× |
× |
× |
配偶者と子ども |
1/4 |
1/4 |
× |
× |
配偶者と父母 |
2/6 |
× |
1/6 |
× |
配偶者と兄弟 |
1/2 |
× |
× |
× |
子どものみ |
× |
1/2 |
× |
× |
父母のみ |
× |
× |
1/3 |
× |
実際にどれくらいの相続金額がもらえるか具体例を出してみましょう。
以下のような条件で考えてみます。
・相続財産は1億円
・遺言書に「長男にのみ財産を相続させる」と書かれてあった
・そのほかの相続人は故人の配偶者と次男がいる
このような場合であれば、表の「配偶者と子ども」の部分にあたるため、配偶者と次男には遺留分としてそれぞれ1億円の1/4ずつの金額が配分されます。
配偶者の遺留分:1億円×1/4=2500万円
次男の遺留分:1億円×1/4=2500万円
故人の財産には借金が残っている場合もあります。
遺品整理の前に借金が残ることが分かっていれば財産放棄の申述を早めに進めればよいのですが、遺品整理前に借金が多いのか財産が多いのか分からないケースがほとんど。
その場合は、高価なものや経済的価値がありそうなものに関しては触れずに、思い出の写真や形見分け程度のものだけ遺品整理しておきましょう。
価値のあるものを遺品整理で処分してしまうと、単純承認とみなされて相続放棄ができなくなってしまいます。
財産を処分しなければ単純承認されないので、故人の財産と借金の確認だけに留めつつ相続放棄をするかどうかを判断しましょう。
相続税の対象となる遺品は複数ありますが、初めての遺品整理だと分からないですよね。
そこで、下記に相続税の対象になる代表的な遺品をまとめましたので、現在の遺品整理の現状と照らし合わせつつ相続する財産がいくらになるのかを確認してみてください。
現金や預金はもちろん相続税の対象です。
しかし、ヘソクリやインターネット銀行の確認を見落とすケースもあるので注意が必要です。
遺品整理をおこなう際は必ず遺品整理リストを付けて、確認し忘れがないようにしましょう。
次に見落としがちなものが、株式などの有価証券です。
株式や有価証券は売却時ではなく、譲渡されただけで相続税が発生しますが【3000万円+(600万円×法定相続人の数)】分は控除されます。
紙の有価証券のほかに、インターネット上の証券やFX取引の可能性もあるため注意が必要です。
インターネット上のデジタル遺品整理に関しては下記のコラムで詳しく解説していますので、参考にしてください。
デジタル遺品をわかりやすく解説します【トラブルもあるので注意】
ネックレスや指輪などの宝石類も相続税の課税対象です。
遺品整理業者に査定してもらうのも良いですが課税対象になるので、業者が提携していたり専属の鑑定士に見てもらい正確な適性価格を出してもらいましょう。
土地は相続トラブルになりやすい財産です。
評価額は個人でも出すことができますが、課税対象なので不安であれば不動産会社に正確な評価額を出してもらいましょう。
家屋も不動産による相続トラブルが起きやすい財産です。
建物の評価額も個人で出すことができますが、不動産会社に土地の評価額を出してもらう際に一緒に見積もってもらいましょう。
故人がお金を誰かに貸しており未返済の場合は債権として財産です。
例えば、故人が1000万円の貸付をして全く返済されておらず相続税率が10%だった場合、1000万円×10%=100万円が相続税として課せられます。
税率はのちほど紹介する相続税の計算は簡単【遺品の総額-控除額=課税額】で詳しく解説していますので参考にしてください。
特許権や著作権は知的財産の扱いとなるため相続税が課せられます。
それぞれの課税額の計算は以下の通りです。
・著作権:「年平均印税収入額×0.5×複利年金現価率」
・特許権:「超過利益額(平均利益額×0.5-標準企業者報酬額-総資産額×0.05)×基準年利率による複利年金現価率」
福利年金減価率は、以下の国税庁の福利表を参考にしてください。
参考資料:国税庁 複利表
保険の契約者が被保険者の場合は、保険金にも相続税が課税されます。
ただし、保険金は下記の範囲で非課税枠を設けているため死亡保険での相続税は保険金の満額を支払う必要はありません。
死亡保険の課税対象額=死亡保険金-(法定相続人×人数)
相続税の計算はとてもややこしく感じますが、実は単純な計算で算出できます。
手順としては以下の通りです。
・課税対象額を計算
・課税対象額から相続税を算出
上記の計算式をさらに詳しく解説していきます。
まずは相続財産の合計から課税対象額を算出しましょう。
課税対象額を出すためには基礎控除額も必要なので、一緒に解説していきます
計算式は以下のような通りです。
・基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
・課税対象額=相続財産の合計 - 基礎控除額
課税対象額が算出できたら、以下の課税対象額別の税率と控除額の表を参考にしてみてください。
※表2
課税対象額 |
税率 |
控除額 |
1000万円以下 |
10% |
ー |
1000万円<3000万円以下 |
15% |
50万円 |
3000万円<5000万円以下 |
20% |
200万円 |
5000万円<1億円以下 |
30% |
700万円 |
1億円<2億円以下 |
40% |
1700万円 |
2億円<3億円以下 |
45% |
2700万円 |
3億円<6億円以下 |
50% |
4200万円 |
6億円< |
55% |
7200万円 |
税率と控除額がわかれば相続税を算出できます。
・相続税=課税対象額×税率-控除額
それでは、事例を用いて相続税を計算してみましょう。
例えば、以下の条件を例にします。
・法定相続人:故人の配偶者1人と子ども3人
・相続財産:1億円
まずは、基礎控除額と課税対象額を算出。
・基礎控除額:3000万円+(600万円×4人)=5400万円
・課税対象額:1億円-5400万円=4600万円
最後に相続税を表を持ち入りながら算出します。
・相続税:4600万円×20%-200万円=720万円
以上から、相続税の課税額が1億円の相続財産に対して720万円と分かりました。
例で紹介したように、数百万円も相続税で課税されるのは少しでも避けたいですよね。
相続税の節税は基本的に生前におこなう場合が多いですが、実は亡くなったあとでも節税できる方法があります。
特に有効な2つの方法をお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
亡くなったあとでもできる節税方法1つ目は、小規模宅地特例を使う方法です。
小規模宅地の特例とは、自宅の土地面積330㎡までであれば不動産評価額が80%減額される特例で、亡くなった故人と同居していた場合に適応されます。
仮に、故人が老人施設に移ったあとに亡くなった際も自宅に居住していれば適応できるので現状、もっとも強力な節税方法です。
例えば、評価額1億円で相続する場合、小規模宅地の特例を利用すると課税対象額が80%減額されるので2000万円。
2000万円であれば、先ほど伝えた基礎控除額の3600万円内でおさまるため相続税が0円になります。
もうひとつの節税方法は、配偶者の税額軽減特例を使った配偶者控除です。
配偶者控除は、配偶者しか利用できませんが節税額が大きいのでぜひ活用してみてください。
制度の詳細は、配偶者が相続した財産が配偶者の法定相続人分額か1億6000万円のどちらか高い額の範囲内で課税が免除される制度です。
配偶者の法定相続人分額は、以下のケースで変化します。
法定相続人 |
配偶者の法定相続分額 |
配偶者と子どもが相続 |
相続する財産の1/2 |
配偶者と被相続人の親が相続 |
相続する財産の2/3 |
配偶者と被相続人の兄弟が相続 |
相続する財産の3/4 |
事例をもとに考えてみましょう。
配偶者控除の計算例
例えば、相続財産が3億円で法定相続人が配偶者1人と子ども1人の場合で計算します。
相続財産3億円に対して配偶者の法定相続分は1/2なので、3億×1/2=1億5000万円となり1億6000万円を超えていないため相続税は課税されません。
配偶者は、1億6000万円までの法定相続人分額であれば相続税が控除され節税効果が高いので覚えておきましょう。
ここまで亡くなったあとでも使える相続税の節税方法でしたが、生前での対策もできます。
生前の相続税対策の方法は多いのですが、そのなかでもよく使われるものを2つ紹介していきます。
生前贈与は、まだ生前のときに別の個人に財産を譲渡することで死後に残る財産を減らす施策です。
もっとも相続税の節税がしやすく難しい内容でもないため、生前での相続税の節税対策であげられます。
例えば、死後に5000万円の財産を相続するよりも、生前に5000万円のうち3000万円を生前贈与しておけば相続税の対象額を2000万円まで減らせます。
ただし、生前贈与は贈与税が課税されるので注意が必要です。
養子縁組で親子関係になった子どもは法定相続人として扱えるため、相続税の基礎控除額を増やす節税方法です。
養子自体は何人でも受け入れてもいいのですが法定相続人扱いにできる養子は、実子がいれば1人、いなければ2人までの規定があります。
また、先ほどお伝えしたように生命保険には非課税枠があるため生命保険に課税される相続税も節税可能です。
さらに、死亡退職金にも500万円×法定相続人分の非課税枠が設けられているので養子縁組を活用した節税は効果が高い施策と言えます。
ただし、明らかに節税目的のためによる養子縁組は国税庁などの公的機関により否認される場合ももちろんあります。
あくまで『養子縁組を活用して節税しても良い』という意味ではないことには注意が必要です。
相続税は節税方法によって計算が異なるため混乱しやすいため、個人だけで相続税を計算して確定させるのは難しいと思う方もいます。
状況に応じた計算方法や相続税の詳細が分からない場合は、まず遺品整理をしてくれた業者に相談してみると良いでしょう。
そのため、作業を依頼する遺品整理業者に税理士や弁護士が提携しているところを探してみるのがおすすめです。
関西地方であれば「クリーンケア」が年中無休でご相談に応じさせていただきますので、お悩みがあればお気軽にご連絡ください。
それでは最後に相続税についてまとめていきましょう。
相続税とは
・相続財産全てに課税される税金
・納税は亡くなったことを知った翌日から10ヶ月以内に申告書も含めて納める。
・不動産や相続に関するトラブルが多いので遺言書は残しておく
・遺言書で相続財産を独り占めされないよう遺留分がもらえる
・相続税にはいくつか控除がある
・生前・死後で節税方法が違う
また、今回紹介した控除は以下の4つです。
・基礎控除:3000万円+(600万円×法定相続人の数)
・死亡保険控除:500万円×法定相続人の数
・死亡退職金控除:500万円×法定相続人の数
・配偶者控除:法定相続人分額と1億6000万円を比較して金額が高い方の範囲内が控除
・小規模宅地の特例:自宅の土地面積330㎡の範囲は不動産評価額が80%減額
期限内に納税できなければ、以下のペナルティが課せられるので注意が必要です。
・納付期限より2ヶ月以内:2.8%
・納付期限より2ヶ月以降:9.1%
相続税は自分で計算して申告書を提出しなければいけないので、難しければ税理士や弁護士に相談しましょう。